発達障害 ADHDの治療に新しい薬 。インチュニブとコンサータとストラテラの違い

発達障害そのものを治療する薬はありませんが、ADHDに有効だとされている薬は現在2つあります。

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平成29年5月に、2つの薬に続いて3つ目の薬「インチュニブ」が日本で販売されることになりました。

今回は、現在使われているコンサータとストラテラ、新しい薬インチュニブの特徴と違いなどについてまとめました。

発達障害 ADHDとは?

ADHDとは「注意欠如多動性障害」と呼ばれるもので、多動・不注意・衝動を主な症状とする発達障害の一種です。

ADHDの原因

ADHDの原因はまだはっきりとはわかっていませんが、脳の特定の部位が活発に働いていないことが原因ではないかと言われています。

主に、脳の前頭前野尾状核と呼ばれる部分の働きの弱さが指摘されています。

前頭前野は、その場面の状況を判断して適切に行動をしたり、感情や注意や行動をコントロールしたり、意思決定を行ったりします。

ADHDの方は、前頭前野の部分で、神経細胞間の伝達をスムーズに行うための神経伝達物質が活発に働かないために、状況の判断や感情や注意のコントロールが苦手になるのではないかと言われています。

前頭前野で活動する神経伝達物質はドーパミンノルアドレナリンです。

ADHDの治療には、このドーパミンとノルアドレナリンの働きをどう活発にさせるかが課題になってきます。

発達障害 ADHDの症状

ADHDには大きく3つのタイプに分けられます。どんな症状なのか、少しみていきます。

多動タイプ

  • 落ち着きがない
  • 座っていても、身体のどこかが動いている
  • 話をしていても目がキョロキョロして落ち着きがない感じ
  • よく動くので、買い物にもなかなか連れて行けない
  • 話し出すと止まらない

不注意タイプ

  • 集中力がない
  • 片付けができない
  • 忘れ物が多い
  • 興味があることにはずっと集中しているが、関心がないと全くしない
  • 刺激に反応しやすい。何かをやっていてもすぐに目移りしてしまう
  • よくけがをしたり、事故にあう

衝動タイプ

  • 言いたいことが我慢できないので失敗する
  • 人の会話に割って入ってしまう
  • 怒りっぽくて、スイッチが入るとすぐに怒る
  • 我慢ができない
  • 興味を持つとすぐに触ってしまう

 

発達障害 ADHDの薬の歴史

もともと発達障害の中でもADHDに対しては症状を改善させる薬がありました。それがリタリンという薬です。

リタリンは中枢神経刺激薬と言われ、脳の神経に直接作用ししてドーパミンやノルアドレナリンを増やす役割がありました。

しかし中枢神経刺激薬はその、その作用のしかたが覚醒剤ととても似ていて、飲まないと落ち着かなくなったり、イライラするような精神症状が出てしまいます

薬への“依存”が高くなって止められなくなってしまいます。

また、薬を使ううちに身体が慣れてしまって、どんどん効き目が悪くなる“耐性”の問題もあり、一時期リタリンを乱用する患者が出てしまって、社会的な問題になりました。

そのため、リタリンはADHDの治療には使用することができなくなりました。

リタリンの代わりに出てきたのが「コンサータ」という薬です。

リタリンに即効性があるのに対して、コンサータはゆっくり効き目が出るように工夫されましたので、“依存性”の問題が随分改善されました。

次に出てきた薬が「ストラテラ」です。

ストラテラは非中枢刺激薬と呼ばれ、コンサータのような脳に直接作用する中枢神経刺激薬ではなく、依存性がないの特徴です。ただし、効き目がゆっくりなのが特徴で、早くても服用してから2週間以上経たないと効果が見えてきません。

そして今回販売されたのが「インチュニブ」です。ストラテラと同じく非中枢神経刺激薬です。

ストラテラと比べて効果が出るのが早いのが特徴です。

発達障害 ADHDの薬の特徴

ADHDに有効な3つの薬について、薬が作用するしくみを下の図にまとめました。この図をもとに解説します。

コンサータ  ストラテラ  インチュニブのしくみ

コンサータの薬のしくみ

ドーパミントランスポーター及びノルアドレナリントランスポーターに結合し、再取り込みを抑制することにより、シナプス間隙に存在するドーパミン及びノルアドレナリンを増加せて線形系の機能を亢進すると考えられています。

ヤンセンファーマ

ドーパミントランスポーターとノルアドレナリントランスポーターをブロックして、ドーパミンとノルアドレナリンを増やすのですね。

また、コンサータは直接ドーパミンを放出させる働きも持っていて、中枢神経刺激薬とされています。

ストラテラの薬のしくみ

前頭前野において、ノルアドレナリントランスポーターを阻害することにより、ドーパミン及びノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、これらの濃度を上昇させました。

日本イーライリリー

ノルアドレナリントランスポーターをブロック!

ドーパミンやノルアドレナリンが取り込まれるのを阻止し、ノルアドレナリンやドーパミンを増やすんですね。

インチュニブの薬のしくみ

後シナプスの「α2A受容体」を選択的に刺激することで、前頭前野皮質で減弱しているシグナル伝達を“増強”させると考えられています。

後シナプスのα2A受容体の活性化レベルが低く、ⅽAMPの産生量が高い条件下では、HCNチャネルが開口することにより、前頭前野皮質におけるシグナル伝達が減弱する。

インチュニブは、後シナプスのα2A受容体を選択的に刺激することで、cAMPの産生が阻害されてHCNチャネルが閉じ、前頭前皮質で減弱しているシグナル伝達が“増強”されると考えられる。

シオノギ製薬

つまり、神経伝達物質を受け取る後シナプスにインチュニブが作用することで、ノルアドレナリンなどがしっかり伝わるようになる…ということですね。

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発達障害 ADHDの薬のそれぞれの特徴

コンサータ(メチルフェニデート)

販売開始年月日:2007年12月

中枢性神経刺激薬です。

処方:特定の講習を受講した登録医と登録薬剤師しか取り扱うことができません。

対象年齢:6歳~17歳でしたが、現在は大人にも適応されています。

効果:中枢神経刺激薬なので効果がみられるのも早いです。

服用:1日1回。12時間効き目が持続します。

薬の形:錠剤です。特殊な工夫がされていて、即効で効く層と、ゆっくり溶け出す層の2層でできています。

18㎎、27㎎、36㎎があります。

服用上の注意:運動性チックやトゥレット症候群の既往症があったり、家族歴がある時は注意が必要です。

中枢神経刺激作用があるので、寝る時間などを考えなければいけません。飲むのが遅くなると、寝つきが悪くなります。

副作用:80.6%に副作用が見られます。食欲不振(33.3%)、初期不眠症(13.4%)、体重減少(12.0%)、悪心(5.6%)、チック(5.1%)、発熱(5.1%)

重大な副作用としては、剥脱性皮膚炎、狭心症、悪性症候群、脳血管障害が見られます。

3割の子どもに食欲不振が見られるという事ですね。育ち盛りですので、この辺りは注意したいですね。

ストラテラ(アトモキセチン)

販売開始年月日:2009年6月

非中枢性神経刺激薬です。

処方:どの医師でも処方できます。

効果:多動性、衝動性、不注意のどの症状にも改善

対象年齢:6~17歳を対象としていましたが、現在は大人にも適応されています。

効果:開始してから2週間くらいで効果が認められるようになります。6~8週間で最大になります。

服用:18歳未満は1日2回

18歳以上は1日1回か、1日2回です。

薬の形:カプセルと内用液の2種類があります。

カプセルは5㎎、10㎎、225㎎、40㎎があります。

内用液はやや苦みがある液ですが、カプセルが苦手な方にはいいかもしれませんね。でも、内用液の単価がとても高いのです!

服用上の注意:ストラテラの薬の成分は眼を刺激しますので、カプセルを開けてはいけません。

副作用:一週目に副作用が出やすいので、始めはゆっくりとすすめることが大事です。

71.9%に副作用が見られます。頭痛(21.6%)、食欲減退(15.5%)、傾眠(14.0%)、腹痛(11.2%)、悪心(9.7%)

重要な副作用としては肝機能障害、黄疸、アナフィラキシーが見られます。

インチュニブ(グアンファシン)

販売開始年月日:2017年5月

非中枢性神経刺激薬です。もともと降圧剤として高血圧のお薬に使われていましたが、研究によってADHDにも有効だということが分かりました。

ストラテラに比べて効果が出るのも速いこと、コンサータのような中枢神経刺激薬ではないので、依存などの心配がないのが特徴です。

多動性、衝動性、不注意のどの症状にも改善

処方:どの医師でも処方できます。

対象年齢:6歳~18歳未満。現在は大人には適応していません。しかし、18歳未満で服用している方が引き続いて使うことが望ましいと医師が判断すれば使用することができます。

効果:投与開始から1~2週間で効果がみられる。

服用:1日1回投与

薬の形:錠剤です。1㎎と3㎎の2種類です。

コンサータやストラテラと比べると小さいので、飲みやすいです。

副作用:74.8%に副作用が見られています。傾眠(57.5%)、血圧低下⇐もともと降圧剤として使用されていたので(15.4%)、頭痛(12.2%)です。

重要な副作用としては低血圧(5%以上)、徐脈(5%以上)、失神(頻度不明)、房室ブロック(0.5%未満)があります。



まとめ

いかがでしたか?

発達障害の一種であるADHDの症状に対して、日本で承認されているは3種類あります。

コンサータは効くのが早く、服用も1日1回だけですが、中枢神経刺激薬であるために、依存性や耐性の問題が挙げられます。

ストラテラは非中枢性神経刺激薬なので安全性に優れています。1日2回の服用であること、効き目が出るのに時間がかかるという特徴があります。

インチュニブはストラテラと同様非中枢神経刺激薬で、服用も1日1回、効き目も比較的早く出ます。もともと降圧剤として使われていた薬なので、血圧の低下がみられることがあります。

それぞれの薬には特徴がありますし、どの薬が効くかは人それぞれです。

発達障害の治療にはあまり薬がない中、新しい薬が出て、それで生活が楽になる人が増えるのはとても良いことですね。

 

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