小学生が知能検査や発達検査を受けてわかることと検査の種類

小学生になると学習面も、友達付き合いも本格的になってきます。それと共にいろんなつまずきが出てくる子どもがいます。

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これからどう指導したらいいの?どういう風にみんなで援助したらいいの?何か障害があるの?

そんな疑問に向き合うために、すすめられるのは知能検査や発達検査です。

今回は、小学生が受ける知能検査や発達検査にはどんな種類があるのかをまとめました。

小学生が発達検査や知能検査を受けるまでの経緯

小学生の子どもたちが発達検査や知能検査を受けるのはどんな場合なんでしょうか?大きく2つのパターンがありますので、分けて見ていきます。

幼児期から発達相談を受けている場合

幼児期の子どもは保健所で行われている乳児幼児健診を受けるので、誰でも一度は発達の評価をしてもらっていることになります。

そこで、継続して発達相談を受けることになった方は、小学校入学までは保健所でフォローしてもらえますが、引き続き発達相談が必要な場合は、病院に紹介されることもあります。

この場合は、引き続いて病院で相談しながら定期的に発達検査や知能検査を受けることになります。

中にはすでに発達障害などの診断がついていて、療育を頑張っていたり、病院でリハビリを受けていたりします。

小学生になってから初めて発達について指摘される場合

保健所の健診で何も指摘されなかったのに、小学校に入学してからいろんな問題が出てくることがあります。

一番多いのは学習の問題です。文字を書いたり読んだりすることが難しかったり、計算ができなかったり。黒板の文字を写すのが大変で、連絡帳が書けなくて困る小学生もいます。

次に多いのは、授業中の態度ではないかと思います。授業中に立ち歩く、出し抜けにしゃべってしまう、集中力がない、すぐ怒る。そんなことが問題になってきます。

友達関係の問題も多いです。お友達とうまく遊べない。カッとなりやすくて手が出る。そんな問題が多いです。

そんな困り感が出てきた時に、学校から発達検査や知能検査を勧めらることになります。

小学生に発達検査や知能検査が必要な理由

小学校はある意味小さな社会ですが、でも、そこは失敗が許される社会です。

友達とケンカをしたり、仲直りしたり。告げ口したり、されて叱られたり…。子どもたちは、そうした失敗が許される社会の中で、沢山の失敗を経験しながら学習し、社会のルールを学んでいきます。

しかし、発達障害の小学生は、これらの経験から自然にルールを学ぶことが難しく、この段階で必要とされる経験や課題を積み残したまま思春期に突入してしまうと、挫折感を味わったり、自信をなくしてしまいがちになります。そして、なかなか失敗が許されなくなる大人になっても、社会的なスキルが十分でないままの状態になってしまい、不安障害や強迫障害などの二次障害を持ってしまう方もおられます。

ですので、周囲の大人がその子どもの個性や特性を理解して、お友達とコミュニケーションをとる機会をしっかりと作ってあげて、成功する経験を積ませてあげることが大切です。

また、小学生になると勉強が本格的になり、文字や数字、四則計算など、低学年でもたくさんのことを学びます。しかし、学習障害のように、読む・書く・計算する・推測する、などが難しい子どもはそこでつまずいてしまい、授業を受けることが苦痛になったり、学校そのものが辛いものになってしまいます。

目の前で困っている小学生に、知的障害や発達障害、学習障害はないだろうか?

そういったことをちゃんと把握して、大人がどんなことをしてあげたらいいのか、どんな環境だと過ごしやすいのかを具体的に考えていくことが必要です。年齢が小さいうちにしっかりと対策を立てられると、早い段階から成功体験を積ませてあげることができます。

その手立てをみつけるために発達検査を行います。

発達検査では、結果が「知能指数」などの数値が出るので、どうしてもそこが気になるかもしれませんが、数字よりももっと大切なことは、検査結果から見えてくる子どもの特徴、強みと弱みを知り、学校で自信を持って取り組んでいけるように支援することなのです。

どんな種類の検査があるのでしょうか?

では、どんな時にどんな検査を行うのかみていきましょう。発達検査は沢山の種類がありますが、そのうちポピュラーなものを紹介します。

検査の種類     年齢の小さな小学生向き   新版K式発達検査

もともと京都市児童院で開発された検査で、近畿を中心に、保健所健診で使われるようになってきました。余談ですが、K式の“K”は“京都”のKです。

生まれて数ヶ月の赤ちゃんから発達評価することができる検査で、幼児期の評価がとても充実しています。年齢が高くなると、他に受けることができる検査の種類が増えてくるので、小さいうちは「新版K式」、大きくなると他の知能検査や発達検査を行うことが多いです。

まず見るのは、その小学生の実年齢です。新版k式発達検査では、その年齢を「生活年齢」と呼びます。

次に見るのは「発達年齢」です。新版k式発達検査は、子どもの発達にとって必要な達成課題をクリアしているかどうかをチェックして見ていく検査です。発達課題を達成している年齢を「発達年齢」と呼びます。

生活年齢に対して、発達年齢がどの辺りにいるのか。それを表すのが「発達指数」でDQと呼びます。DQは100を基準とします

例えば、5才の幼児の発達年齢が5才だったらDQ100です。8才の子どもの発達年齢が4才だったらDQは50になります。基準からの隔たりを数字で表すんですね。

0才の赤ちゃんから成人まで行うことができます。

半年以上の期間をあけて検査を行うことが望ましいとされています。

検査からわかること

  • この検査は3つの領域があり、「運動面」「認知面」「言語面」から評価していきます。
  • こどもの心身の発達をくまなく、全体的にバランス良く評価していくのがこの検査の特徴です。
  • それぞれの領域に差が見られるときは、どんな発達の課題につまずいているのかを考えます。そして、どう対応してあげればそこを伸ばすことができるのかを考えます。
  • この検査で、知的障害があるかどうかも分かります。知的障害の判断基準はいろいろありますが、だいたいDQ75あたりで考えることが多いです。70前後の結果が出ると、少し発達がゆっくりなんだという判断をします。

検査の種類    最もポピュラー  学習支援にも役立つWISC知能検査

知能検査には様々な種類がありますが、WISCは世界で最も広く使われている検査です。WISCはウィスクと読みます。

現在はバーション4が使われていて、検査名はWISC-Ⅳと言います。ウィスク-フォーと読みます。

「Wechsler Inelligence Scale for Children-Fourth Edition」:ウェクスラー児童用知能検査第4版の略です。

ウェクスラー知能検査の中にも、さらにいくつかの種類の検査があり、成人用のWAIS-Ⅲ、小さな子ども用のWPPSI-Ⅲなどがあります。WISCができない小さな子ども、2才半から7才3ヶ月の子どもはWPPSIを受けたりします。

小学生が発達検査を受ける…となったら、まずこのWISC知能検査を第一選択にするくらいポピュラーな検査で、検査結果は「知能指数」として表されます

WISCは認知能力を測る種類の検査で、「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つの指標と、「全検査IQ」という得点が出されます。つまり、検査結果を「知能指数IQ」と、あと4つの得点で表される検査です。

WISCは5才〜16才11ヶ月までの子どもが受けることができます。

この検査も半年以上の期間をあけることが望ましいとされていますが、あまり頻繁に行うと記憶してしまって正しい評価ができなくなります。1年以上空いている方が良いでしょうし、そんなに頻繁に行っても意味がありません。

知能指数と信頼区間

知能検査の結果で一番気になるのは「知能指数」でしょう。

知能指数のIQは100を基準としており、85から115までの領域を「標準域」にあるとみなします。

知的障害があるかどうかは、臨床的にはやはり75位を目安にすることが多いです。

WISCのIQは40から160までで表されますので、40以下点数の子どもは「IQは40以下です。」と表現することしかできません。ですから、具体的な数値が必要な場合は、新版K式発達検査のような他の検査でもう一度評価し直すこともあります。

この検査で注意していただきたいのは「知能指数」の数字だけが全てではないということです。

WISC-Ⅳから「信頼区間」というのを重視するようになっています。IQが90だった人の信頼区間が85ー100だったとします。すると、この子どもはIQは85から100の間にある子どもだと評価するのです。その日、その時に出た知能指数は絶対的なものでなく、体調や環境によって左右されて誤差が生じるものですので、IQに幅を持たせて考えるというのがWISC-Ⅳの考え方です。

WISCの結果をみる時は、IQだけではなく、信頼区間をじっくりみてくださいね。

WISC知能検査からわかること

WISCの一番大きな特徴は知能指数が導き出されるところですが、この検査の良いところはそれだけではありません。

その子ども個人の得意、不得意が分かるのが非常に素晴らしい点です。そのばらつき方を見て、学習面にどんな配慮が必要なのかを判断していきます。

具体的には「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」という項目からいろいろと見ていきます。

  • 言語理解:言語的な課題です。言葉の概念を獲得できているか?など、言葉に関する数種類の検査を行います。この分野が苦手なな小学生は、耳から情報を得るのが苦手なのかもしれません。また、言葉の概念が、年齢相応に獲得されていないのかもしれません。言葉で表現するのが苦手なのかもしれません。発達障害の小学生は、言葉を知ってはいても社会的な知識が乏しかったりします。
  • 知覚推理:目からの情報を手がかりに行う項目です。目からの情報収集が苦手な小学生は、この課題が苦手だったりします。
  • ワーキングメモリー:ワーキングメモリーとは、なにかの作業をするときに覚えておかなければいけない短期記憶的な課題です。この課題が苦手な小学生は、一度聞いただけではなかなか理解できなくて困ってしまったり、順序立てて作業をするのが苦手だったりします。
  • 処理速度:正確に、ミスなく作業ができるかどうかを見ます。目の使い方が上手にできるか?目と手の協調的な作業ができるか?注意力は維持できるか?そんな点を見ていきます。
  • 対応する力:発達検査は複数の項目を行なっていきますが、検査者が「こうしてくださいね」と指示する内容を理解した時に、子どもは柔軟に対応することが必要です。その場の要求に柔軟に対応できるか?そんなことも検査を通して見ていきます。
  • 獲得した知識:人は日常生活や学校生活を通して様々な知識を学んでいきます。そんな知識が定着しているかも見ていきます。

これらの情報をもとに、強みを活かしながら、苦手な点を克服していくための具体的な手立てを考えていきます。

WISC知能検査で発達障害がわかるの?

発達障害の診断までの手順を見てみると、必ずと言っていいほど「WISCを受けましょう」という言葉が出てきます。WISCを行うことで、発達障害がわかるのかな?と思ってしまいますね。

もともとWISC知能検査は知能を測るものですので、発達障害があるかどうかを判断するものではありません。本来の目的は、発達障害の子どもに知的障害があるかどうかを判断するためにWISCは行われます。

しかし、だからといってWISC知能検査からは何も情報が得られないかといえばそうではありません。

質問に対してどう反応するか?

ストレスを感じた時にどんな状態になるのか?

長時間の検査に集中できる力を持っているか?

検査者と円滑にコミュニケーションを取ることができるか?

どんな表情で検査を受けるか?

困った時にどうするのか?

など、検査を通して見えてくる情報が沢山あります。

発達障害かどうかを臨床観察できる場として検査を考えると、WISCではとても貴重な情報が得ることができます。

これらの情報は、発達障害を診断する時に役立つのです。

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検査の種類    情報の処理の特徴を見るならKABC-Ⅱ

どんな発達を見たいのか?によって受ける発達検査の種類は変わります。

最近は認知面を評価する発達検査がたくさん出てきています。その中でもとても有名なのはKABC-Ⅱです。

KABC-ⅡはKaufman Assessment Battery for Children の頭文字を取ったもので、K-ABCの改訂版です。ケーエービーシーツーと読みます。

私たちはあることに取り組む時に、いろんな情報を収集して、それを理解しながら取り組んでいきます。

KABC-Ⅱでは、認知面の情報処理の仕方に、得意・不得意の差がないかを見ていきます。

情報処理の過程には大きく2つの種類があります。

  • 同時処理過程:一度に複数の情報をまとめていく様式です。パッと見て、瞬時に全体を把握するような処理過程です。
  • 継次処理過程:情報を1つずつ時間の流れに沿って処理する様式です。順序を覚えて、整理しながら処理することが大事です。

情報を処理するにはどちらの力も必要ですので、差がないか、どんな情報処理が苦手なのかを知っていきます。

また、KABC-Ⅱでは、ことばや文、数の理解などの「習得度」も判断できるのが大きな特徴です(習得尺度)。

適応年齢は2歳6ヶ月〜18歳11ヶ月の人が対象です。特に小学生は学習面で困ることが多いので、このKABC-Ⅱを受ける事が多いです。

認知面の力も、習得度の面も、どちらも得点は100を基準に表されます。

検査の種類   小学生が受けるその他の検査

学習障害

小学生の子どもでは、学習上の課題が問題になることが多く、学習障害がないかどうかを判断するために検査を行うことが多いです。

学習障害とは、知能に問題はないのに、読むことが特に苦手だったり、書くことが苦手だったり、計算することが苦手だったりする障害です。

ひらがなやカタカナ、漢字は、学年相応に獲得できているか?

「っ」や「キャ、キュ、キョ」などの特殊音節がが間違いなく使えるか?

繰り上がりや繰り下がり、小数点のある計算が理解できているか?

そんなことを評価しています。

学習障害を判断する検査は大変多く、どれを採用するかは病院や学校によって違います。

まとめ

発達検査や知能検査を受けるように言われると、親としてはとてもショックかもしれませんが、もし、本当にお子さんが何かに苦しんでおられるのならば、きちんと検査を受けて、周囲の大人がきちんと理解してあげることが重要です。

小学生は思考が柔軟で、変化にも対応しやすい年代にあるので、周囲の大人が正しく理解して適切な対応を行えば、見違えるほど変化しています。

そこで得た小さな自信は自己肯定感を高め、やがて、前向きでストレスにも負けない強い子どもに成長していきます。

さまざまな種類に発達検査がありますので、専門家とよく相談して検査を行い、対応策をしっかりと考えていきましょう。

発達検査を受けることの意味は、結果の良し悪しではありません。結果から、小学生の子どもの特徴を知り、どう伸ばしてあげるかを考えることが一番重要です。

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