子どもは誰でも感情表現が未熟で、すぐに泣いたり甘えたりとコロコロと態度を変えてくるものです。
すぐ怒って駄々をこねる姿もスーパーで時々見かけますよね。
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しかしADHDの子どもは感情のコントロールが苦手で、突然キレて周りを振り回し、しかもその後はケロッとしているので対応に困ることが多いものです。
すぐ怒る事とどう向き合えばいいのでしょうか?
ADHDとは?
アメリカ精神医学会が発行する「DSM-5 精神疾患の診断と統計マニュアル」は様々な疾患の診断基準が述べられていて、日本でもこれらを元に診断が行われています。
それには「不注意」タイプと「多動性・衝動性」タイプとに分けられています。
A-1.不注意
不注意な間違いをする注意を持続することが困難
話しかけられた時に、しばしば聞いていないように見える
しばしば指示に従えず学業などの義務をやり遂げることができない
課題や活動を順序立てることが困難
努力の持続を要する課題に従事することを避ける
課題や活動に必要なものをなくす
外的な刺激によって気が散ってしまう
日々の活動を忘れっぽい
☆上記の症状のうち6つ以上が6ヶ月以上続く(17歳以上では5つ以上)
A-2.多動性・衝動性
手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする。またはモジモジする
席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる
不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする
静かに遊んだり余暇活動につくことができない
じっとしていない、エンジンで動かされているように行動する
喋りすぎる
質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう
自分の順番を待つことが困難
しばしば他人を妨害し、邪魔をする
☆上記の症状のうち6つ以上が6ヶ月以上続く(17歳以上では5つ以上)
B.12歳になる前からいくつかの症状が存在していた
C.いくつかの症状が2つ以上の状況において存在する(家庭、学校、職場など)
D.これらの症状が、社会的、学業的、職業的機能を損なわせている
不注意タイプはすぐに忘れ物をしたり、ボーッとしているように見えてるため、よくドラえもんに登場する“のび太くんタイプ”と言われたりします。
一方よく動き回り、スイッチが入ったら喋り始めてしまったりするタイプは“ジャイアンタイプ”と呼ばれたりします。
どちらも混ざっている「混合型」タイプの子どもも多いです。
すぐにスイッチが入って怒るのは“ジャイアンタイプ”の「多動・衝動優勢型」の子どもに多いです。
ADHDと子どもがすぐ怒る原因
ADHDの子どもがすぐ怒る原因には以下の事が考えられます。
叱られやすい
注意力がなくて忘れ物が多かったり、ケアレスミスが多い。
根気がなくて最後までやり遂げられない。
周りの音や人にすぐに反応してしまって気が散りやすい。
落ち着いて座ることできない。
危険な行動も平気で行うので危なっかしい。
人がお喋りしているのに平気で割って入る。
手を挙げない、指名されていないのに出し抜けに答えてしまう。
順番が待てない。など、普段から子ども生活を見ている方にとってはイライラさせられることが多く、すぐに叱ってしまいます。
子どもから見ると、何かにつけてすぐ叱られてしまい、イライラを溜め込んでしまったり、逆に自信をなくしてしまったりします。
子どもが溜め込んでしまったイライラが怒る事に繋がります。
ストレスに耐える力が弱い
ADHDの子どもはストレスに耐える力が弱いです。
普通なら叱られても人の話に耳を傾けて、しっかりと反省して自分の行動について考えることができます。
少し困難な場面に遭遇しても、乗り越えようと頑張る事ができます。
しかしADHDの子どもは、叱られる事そのもののが耐えられなかったり、嫌な事に対して、辛いけれど正面から向き合う事がなかなか難しいです。
辛い場面や耐え難い場面になると受け止められずにシャットアウトしてしまって、その結果が怒る事に結びついてしまいます。
ストレスを受けやすい
発達障害の子どもはストレスを受けやすいと言われています。
音や暑さ・寒さ、光や匂いなど、いろんな刺激が苦手で、日常生活を送る事自体がとても疲れやすい環境にあります。
学校に行って授業を受けるだけでもストレスになるのです。
また、こんな場面で?と感じるような時にストレスを受けたりもします。
友達にからかわれる経験は誰にでもあると思いますが、そんな小さな嫌な思い出をいつまでも覚えていて、過去の経験とよく似た場面に遭遇すると、パァ〜っと過去の記憶が蘇って混乱してしまいます。
そしてそれが怒りを蘇らせて突然怒る行動に繋がっていきます。
見通しを持てない
ADHDの子どもは過去の経験を反省して次に活かしていく事が苦手です。
経験が知識としてなかなか積み重なりません。
ですから「次は怒りそうになったらお友達にこう言おう」
「こんな場面では、逃げた方が上手くいくな」と想定するにが苦手です。
よく似た場面に遭遇しても、行き当たりばったりの行動に出てしまい、失敗してから「あっ!やってしまった」と失敗に気づきます。
言葉で表現するのが苦手
ADHDの子どもは自分の心の中に様々な感情が湧いてきても、それをどういう言葉で表現したらいいのかが分かりません。
言葉で上手く表現できないのでついつい手を出してしまいます。
「それを貸して」が言えなくて友達を噛む。
そんな日常会話が上手くできない子どももいます。
また自分が不快に感じている感情が怒りなのか、不安なのか、悔しいのか、恥ずかしいのか、ぴったりくる言葉を選べません。
だから何かの感情が湧いた時に相手に手を出してしまいます。
すぐ怒るのはそんな彼らが持っている唯一の感情表現なのです。
睡眠の問題
ADHDの子どもの中には睡眠リズムが整いにくい子どもがいます。
入眠が難しくて寝付くまでに数時間を要したり、なかなか熟睡できなくてしょっちゅう起きたりします。
また、何かのきっかけで生活リズムが崩れると、ダイレクトに睡眠リズムが崩れてしまう子どももいます。
そうなると朝に起きる事が難しくて、何度起こしても起きない。
目が醒めるまでに時間がかかる。
起きてもボーッとしていて学校に間に合わない。
機嫌が悪くて仏頂面をしている。
すぐ怒る。などが見られるようになります。
自己評価が低い
ADHDの子どもは叱られる事がどうしても多くなってしまい、自信がなくなりやすいと言われています。
達成感を持ちにくく自己肯定感を感じられなくなると、自分に対しての自信がなくなって被害的な思考に結びついていく事があります。
「どうせ僕なんか…。」と、やればできるのにしようとしなかったり、ひがんですねたりします。
コンプレックスを感じている点を指摘されると、キレて怒る事もしばしばです。
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ADHDの子どもが感情のコントロールを学ぶためには?
では、どういう対応を取って向き合っていけばいいのでしょうか?
言葉の力をつける
まずはきちんと言葉で気持ちを伝える習慣を身につけましょう。
噛んだり叩いたりするのではなく、どう伝えれば上手く収まるのかを学びます。
要求、依頼、希望、感謝、謝罪。
いろんなコミュニケーションの取り方を学んでもらいましょう。
子どもは「あの時の言い方は良くなかったよ。」と後になって言われても分かりません。
すぐにその場でしっかりと対応して、具体的な言葉の使い方を教えてあげて下さい。
感情について知る
どの感情をどういう言葉で表すのかが分かれば、言葉で気持ちを伝えやすくなります。
特に、どちらかと言うと不快な感情、例えば悔しい、恥ずかしい、怒る、不安、悲しい、などの言葉を知っていると便利です。
普段の会話で気持ちを言葉にするように促してあげて下さい。
子どもが「○ちゃんのことで腹が立った〜」と言うと、親はついつい「そんなことを言ってはいけません。」と説教しがちですが、例えネガティブな内容だったとしても、それを人にきちんと伝えられる事が大事です。
お母さんや身近な方に一生懸命伝えようと頑張ったことは認めてあげて下さい。
言った事をちゃんと受け止めてもらえた!と子どもが感じたら自信に繋がるからです。
「とても腹が立ったんだね。腹が立つことは誰にでもあること。でも、そんな時はこうしようね。」と受け止めてから、ではどうすればいいのかを具体的に教えてあげましょう。
不安な気持ちや怒りは誰でも感じるものですが、子どもたちは、“そんな感情を持ってはいけない”と考えがちです。
不快な感情を持つことは当然だという事も併せて教えてあげましょう。
自己肯定感を高める
子どもが成長する過程で、人に褒められて、評価を受ける事がとても大事です。
そこから自己肯定感が生まれ、様々なストレスにも立ち向かう事ができる強い自我を形成していくからです。
しかしADHDの子どもは叱られ続けて自己評価が低くなり、自信を失いがちです。
子どもなりに頑張っている事がありますし、以前なら出来ていなかった事が、今では当たり前のようにできるようになっている事もあります。
そんな時はぜひ、何が評価に値するのかを具体的に伝えて認めてあげましょう。
また、どんな時にどんな振る舞いが要求されるのかも具体的に伝えてあげましょう。
「今日の練習では一列に並ぶのを頑張ってみようね。」
「今日のお買い物ではお菓子は50円の物を一つ買います。」などと具体的に伝えるのです。
そしてその目標がきちんと達成できれば、本人の努力を認めてしっかりと褒めてあげましょう。
褒められることで、その行動は強化されます。
“叱って抑制”するよりはるかに楽しくて、しかも確実に子どもは変化します。
睡眠リズムを整える
睡眠リズムが崩れると日中の調子が上がりません。
しっかりと睡眠を確保してあげましょう。
寝る時間が来てもなかなか切り替えが難しい子どもは習慣化させるのも手です。
寝る時にはパジャマに着替えて明日の用意をする、ぬいぐるみにおやすみなさいを言う、など寝るスイッチが入るように儀式を定着化させる方法があります。
まとめ
ADHDの子どもがすぐに怒ってしまって 対応に困ることが多いものですが、ADHDの特性から来るものや、二次的な問題として起こるものまで、怒る原因は様々です。
その原因に応じた対応策を考え、感情を理解し、自己肯定感を高めていくことがとても大事です。
ADHDの子どもの怒りの問題は、放っておくと反社会的な問題へと発展してしまって反抗挑戦性障害と言う新たな障害を生んでしまう事があります。
教育を通して“怒り”と正しく向き合えるようになり、怒りをどう受け止めて、どう行動するかをしっかり考えられる大人になってもらうことが最終目標です。
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