子どもは思った通りにならないとすぐに泣いたり怒ったりして、手を焼いてしまうことが多いものです。
その声が不快でついイラっとしてしまい、大人もついつい大きな声で怒鳴り返したりします。
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でも子どもがすぐ怒る背景には、重大な病気が隠れていることがあります。
それは“うつ”です。
早く気づいて対応してあげることが必要です。
うつになるきっかけ
うつは「心の風邪」と言われるように誰にでも起こり得る病気で、大人にも、そして子どもにも見られる病気です。
小学生では約7%が、中学生になると5人に1人くらいの割合でその傾向が見られると言われていますので、私たちが想像している以上に子どものうつは身近にあると考えられます。
うつのメカニズムは子どもも大人も同じで、脳内の神経物質の伝達が上手くいかなくなる事が原因で、ストレスや環境の変化が影響していると言われています。
子どもの場合は友人関係でのトラブルが上位を占め、引っ越しや親の離婚など生活環境大きな変化が挙げられます。
四月は学年が変わると共にクラスメイトや担任が変わり、ストレスも受けやすい時期です。
この時期を上手く乗り越える事は、小さな子どもにとっては大変になる事もあります。
うつの症状
子どものうつは身体的な症状に表れるのが特徴です。
とても多い症状は腹痛や頭痛、微熱や胸の痛み、便秘や下痢などで、始めは「風邪かな?」「病気かな?」と心配した親が小児科に連れて行っても、特にこれと言った病気が見つかりません。
睡眠不足や食欲がなくなる、成績が急に落ちたり、周りにあまり関心を示さなくなる…など、本人はあまり自覚していないけれど、家族が見ていて気づく症状もあります。
落ち込みが激しくて、友人関係を拒否する様になったり、不登校になったり、リストカットをしだしたりする事もありますが、そんな時はすぐに病院を受診してください。
うつになりやすい性格
大人はよく「真面目」「几帳面」「責任感が強い」など、うつになりやすい人の性格特徴が挙げられています。
しかし、子どもは性格よりも、育った環境やしつけ、乳幼児期の喪失体験が影響すると言われています。
どんな風に育ってきたかで、ストレスにどう向き合うか、どう乗り越えるかの経験値が変わってくるので、その差が影響すると言えるでしょう。
うつと怒り
子どもは大人ほど言語表現が上手くありません。
自分の中に抱えているストレス感情や不安な感情を上手く話せません。
その為に心の中にある、漠然とした感情が行動として表現されます。
うつの場合も、落ち込むだけでなく、行動がとても遅くなったり、ガサガサと落ち着きがなくなったり、集中力がなくなったりします。急に甘え出したり、イライラしたり、とても反抗的になったりします。
うつは大人しくて鬱々としたイメージがありますが、決してそうではありません。
怒る、イライラするというのもうつの症状です。
怒るということ
怒ることについて、少し考えてみたいと思います。
人には様々な感情があります。
嬉しい、楽しい、心地良い、照れる、恥かしい、悔しい、ムシャクシャする、悲しい、苦しい、辛い…などなど挙げればキリがありません。
私たちの生活には、どんな場面にも感情が伴いますが、欲しかった服が買えて嬉しい!の様に、嬉しい気持ちや楽しい気持ちの「快」の感情はとても受け入れやすいものです。
一方で、苦しい、悲しい「不快」な感情はなかなか受け入れ難いもので、特に「怒る」と言う感情は「不快」であるにも関わらず、不快な相手に近づいてコミュニケーションを取りに行く…と言った、とても難しい行動をとることになり、“怒り”ながらも“円滑にコミュニケーションを図る”高度なコミュニケーション力が求められます。
従って“怒る”感情はなかなかコントロールするのが難しく、大人の私たちでさえ“怒り”を表現するのに苦労しています。
そうなってくると、よくやってしまうのが“怒る”気持ちを封印し、心の奥底にしまい込んでしまうことです。
その時はグッと抑えて何とかやり過ごせますが、怒りの気持ちがゼロになった訳ではありません。
心の底には少しづつ怒りがたまり、コップに水がたまってついには溢れ出てしまう様に、怒りのエネルギーがいっぱいになると、ドンドンと外に漏れ出してしまいます。
私たちに必要な事は、コップに怒りが溢れる前に、適度に怒りのエネルギーを抜いていくことです。
怒り向き合う為に
では、イライラして怒りっぽいうつの子どもとどう向き合っていけばいいのでしょうか?
子どもたちは言語表現が表現力がないので、ただでさえもイライラしやすい生活環境にあります。
また、うつになりやすい子どもは様々な生活環境が影響して、ストレスと向き合って乗り越えていく力が“弱って”いる状態であるとも考えられます。
大人はそこに焦点を当てて関わっていく事が大切になってきます。
子どもの話に耳を傾けましょう
まずは子どもの話に耳を傾けましょう。
親は子どもには指示をしがちです。
我慢できなくてすぐにあれこれ言ってしまうのです。
でも少しだけ待ってみてください。
できるだけ子どもから話し出すのを待ってください。
子どもから話す→それをゆっくり聞く。
このパターンに変えるだけでも会話の質がグンと変わります。
子どもに面と向かって「さあ、話してください」と言っても何も話しません。
でも子どもは見ています。
お母さんが洗濯物も畳んでいたり、一緒に車でドライブしたり、フッと大人の心に隙間の様な、余裕の様なものができた瞬間にポツポツと何か話し始めます。
その時はゆったりとした気持ちで聞いてください。
何の変哲も無い雑談の中にこそ、子どもの核心をついた話が盛り込まれています。
まずは何か話したくなるような、ゆる〜い環境を作りましょう。
得意な事、できていることを意識させましょう
子どもが言語表現できない分、他に自分を表現する手段を持っている事はとても良い事です。
絵が得意、ピアノが好き、走るのが好き…など、自分の良さを表現できて、人から認められると自信にもつながります。
子どもが自分らしさを発揮できるものを見つけてあげましょう。
遊び尽くす
特に年齢の小さな子どもは遊ぶ事自体が“癒し”の意味を持っています。
遊び尽くす事は、本来子どもが持っている健全性をとても引き出してくれます。
子どもの回復力を信じながら、子どもの遊びにゆったりと付き合ってください。
焦ってはダメです。
ゆっくりと関わるのです。
目の色が変わってきたり、表情に穏やかさが出てきたら遊びの効果があったと思ってくださいね。
思考様式をちょっと変えてみる
大人のうつの治療にもよく使われますが、物の見方を変えてみる事は、発達途上にある子どもにとって今後の成長にも大きく影響して良い効果を生みます。
例えば、朝、友達に挨拶したのに無視された。
そんな時にどういう思考が生まれるかと言うと人それぞれです。
挨拶をしないあいつが悪い!今度シメてやる!と息まく子どももいれば、私、何かやっちゃったかな?怒らせたのかな?と不安になる子どももいます。
同じ状況でもどんな考えが浮かぶかは人それぞれです。
そんな時に「もしかしたら聞こえていなかったもしれない」と割り切ったり、「挨拶をした私は良い行いをした。返事をしなかったのは相手の問題。なんて事はない。問題は全くない。」と考えられるととても気持ちが楽ですよね。
少しだけ思考を変えるようにアドバイスをしてあげるだけでも随分と変わってきます。
怒りと発達障害
よく怒る。
イライラしている。
ガサガサしている。
そんなうつに似た症状の子どもの中に、発達障害の子どもも含まれている事があります。
発達障害の子どもは社会のルールが分かりにくかったり、相手の気持ちが判断できなかったり、空気を読めなかったり、気持ちを切り替えるのが苦手だったりするので、学校のような集団生活がストレスになります。
それがもとでうつになっている可能性ももちろんありますが、彼らはそれ以上に、生活自体をどう送ればいいのかが分かりにくくて苦痛を感じ、不適応を起こしている可能性があります。
幼少期から育てにくいと感じたり、子どもの成長に何らかの偏りや違和感を感じる親も多いです。
学校の先生とも話し合いながら、生活を送るための環境をしっかりと整えて対応していく事が必要です。
気になる時は専門機関に相談してみましょう。専門の病院や保健所などが対応してくださいます。
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怒りと双極性障害
うつだけではなく、躁の状態もあるのが双極性障害です。
昔は躁うつ病と呼ばれていました。
憂鬱になって泣いたり自己嫌悪に陥ってしまううつの時期と、気分が高揚して多弁になったり向こう見ずな行動をとったり、気分が高揚して怒りっぽくなる時期とが周期的にやってきますが、子どもの躁うつは大人とはやや症状が違い、大人のように周期がはっきりしていないこともあります。
1日の中でめまぐるしく変化することもあります。
不安のために親との分離ができなかったり、躁と鬱との差が激しかったり、とても恐ろしい悪夢にうなされたりと、うつだけではない症状が見られます。
うつと躁うつでは治療で使用する薬の種類が違ってきますので、見極めることが大切だと言われています。
まとめ
子どもはまだまだ発達途上で精神的にも経験的にも未熟な面が多く、幼少期の少ない経験だけでは上手く乗り越えられない出来事に出会ってしまう事はよくあるものです。
言語表現力が未熟な子どもにとって、身体的、行動的な症状を出す事は、精一杯のSOS発信を行なっていると考える事ができます。
その時が子どもの変化の時です。
ピンチはチャンスでもあります。
周囲の人の理解と励ましによって、その苦労を自分の力で乗り越える事ができた時には、その子どもは一回り大きく成長する事ができるのです。
早く対応してあげて、子どもの成長を信じて向き合っていきましょう。
お子さんの育ち方に凸凹があって発達障害が気になる方は、一度こちらの記事をご覧下さい。
また、ADHDについてはこちらをご覧下さい。
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