親と子、特に産み育ててくれる“母”と“子”との結びつきは、好むと好まざるとに関わりなく深くて強いものです。
いい意味でも、悪い意味でも“母”との関係に、人生は大きく左右されてしまいます。
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特に、母親がすぐに怒る為に恐怖を感じて育ってきた女性は、成人しても何かのわだかまりを引きずっている事があり、辛い思いをしがちです。
一体母はどうして怒るのか?
少し、一緒に考えてみませんか?
母性の真実と怒り
「鬼子母神(きしぼじん)」と言う神様をご存知ですか?
子育ての神様、子を守る神様としてあがめられています。
神々しくて美しい姿で表され、如何にも“聖母”のイメージです。
しかし、この神様、実はとんでもない人だったのです。
500人もの子どもを育てていましたが、彼女はなんと、人の子どもをさらって食べる事を繰り返していました。
人々から恐れられていた鬼子母神。
見るに見かねたお釈迦様は、とうとう子どもの1人を隠してしまいました。
子どもがいなくなって嘆き悲しんでいた鬼子母神に向かって、お釈迦様は、鬼子母神によって子を失った母親の気持ちをとつとつと語ったそうです。
そして、改心した鬼子母神は子育てと安産の神様になったそうです。
心理学では、“母親”を語る時に、しばしばこの鬼子母神の話を引き合いにして母性が語られています。
母性とは、この鬼子母神の様な存在なのです。
つまり、人を食べるほど残酷な人が、子育ての神様でもあるという矛盾した二面性こそが“母性”そのものだと言うのです。
皆さんは、“母”と聞いてどんな事を連想しますか?
微笑んでいる母。
優しい母。
慰めてくれる母。
そんな、聖母の様な美しい母と共に、鬼の様な形相の母の顔が浮かんできませんか?
“母性”とは、子どもを守り育てるものであると同時に、殺してしまうほどの力を持ったものです。
ですから、人が子どもを育てる時に、この“母性”をバランスよく保つことが必要です。
子どもに程良い“守り”があると慈愛になります。
しかし、子どもを“守り”すぎたり、思いが行き過ぎると子どもを殺してしまうことに繋がります。
例えば、母親は子どもへの愛情から勉強させようとします。
受験に勝って良い人生を歩んで欲しいと願うからです。
しかし、それが過ぎると、逆に子どもを追い詰めてしまって精神的に殺してしまうことになります。
何となく、感覚的に分かりますよね。
“母性”のそんな二面性は誰にでもあるものです。
優しいお母さんと怖いお母さんが一緒に存在して当然なのです。
母性の現実
しかし、母性のそんな二面性に振り回されて生きている方も多いのではないでしょうか?
母と子どもはとても密接な関係にあります。
子どもを産むと母は自分の血を母乳として分け与え、睡眠時間も自分の人生も時間も、多くのものを子どもに差し出し、ある意味では命をかけて子育てをします。
そんな密接でとても重い関係だからこそ、むき出しになった感情を子どもにぶつけ、鬼子母神の様に牙をむいて襲いかかる様な恐ろしい面を子どもに見せることになってしまいます。
結びつきが強いからこそですが、牙を向けられ続けた子どもは、恐ろしさから逃げようとして、また、自分を守ろうとして感情を抑え込むようになり、母との間に解決しないままの問題を抱え込んで大人へと成長していきます。
では その子どもが母になるとどうなるでしょうか?
そこが、あなたとあなたのお母さんとの関係になります。
女性は「2度人生を生き」ます。
どういうことかと言うと、初めて母になった時には子育ての仕方なんて、全く分かりません。
そして、どうしたらいいのだろう?と考える時に浮かぶのは「私はどうやって育てられたのだろう?」と言うことです。
私が赤ちゃんだった時にはどう接してくれたの?
私がこんなに泣いた時には、どうやって抱きしめてくれたの?
母となった女性はいつも、目の前にいる我が子に自分自身の子ども時代を重ね、自分の育ちについて嫌という程向き合わなければなりません。
私自身は、子育てをしていた時はこうやって自問自答し、まるで、自分を育て直している様な錯覚に襲われる事が度々ありました。
良い思い出でいっぱいの人は、ああ、自分がしてもらった様に、この子にもこうやってあげよう。と、肯定的なイメージで子育てをする事ができます。
しかし、自分の子供時代を振り返った時に辛い過去しかなかったとしたら…。
母は感情的に怒る。
すぐに叩く。
そんな思い出しかなかったら、今、目の前にいる子どもにどうやって愛情をかけたらいいのか分からなくなります。
そんな辛い思いをこの子にはさせたくない!
そう思って一生懸命育てようとするかもしれません。
でもそう思えば思うほど、自分を育てた母への怒りと、解決しないままの心の傷が、自分の子ども通して、嫌という程見えてくるのです。
あなたのお母さんがすぐに怒るのは、そんなお母さん自身の育ちの問題が潜んでいるからかもしれません。
お母さんはあなたの事が嫌いではないのです。
むしろあなたの存在があまりにも近すぎて、今まで蓋をして閉ざしていた心の傷が、あなたと向き合おうとすればするほど開いてしまって、心が痛み続けるのです。
また同時に、愛情を受けて育っているあなたを見るのが辛いのかもしれません。
何故なら、あなたのお母さんが欲しくても得られなかった物をあなたが得ているのですから。
羨ましい気持ちや悲しい気持ち。そんな複雑な感情が絡み合って、あなたに攻撃の牙を向けてあなたを怒るのです。
あなたを怒るのは、あなたへの甘えや、気持ちを理解してほしいいという訴えでもあるのかもしれません。
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怒る母との関係を変えるためには?
あなたは小さい頃からお母さんとの関係で悩み、離れたいと思いながらも、同時に離れる事の難しさも感じているかもしれません。
母と子の絆はそう簡単には切れるものではないからです。
これからは母が怒る事をやめて、楽しく一緒に暮らせる方法はないかと、今も一生懸命考えておられるかもしれません。
何故、あなたのお母さんはすぐ怒るのでしょうか?
何故怒る事をやめないのでしょうか。
様々な原因が考えられます。
一番大きいのは、先ほどから述べているお母さんとそのお母さん、つまりおばあさんとの関係です。
おばあさんから愛されずに冷たくされたりと悲しい生い立ちがあって、その心の傷が癒せていない可能性があります。
さらに、その心の傷を癒してくれるはずのパートナーとの関係も大きく影響します。
旦那様の理解がなかったり夫婦関係が冷え切っていたりすると精神的にはなかなか安定しにくいものです。
離婚されて1人で頑張っている方も、子育ての責任を1人で背負う事になり、精神的には大変です。
また経済的な問題も深く関わってきます。
経済的な余裕がないと心に余裕は出てきません。
借金があったりすると、鬱っぽくなってしまう人もいるほどです。
お金の問題はかなり深刻です。
あなたがお母さんとの関係を良くしようと努力しても、お母さんが生きてきた人生の背景にある様々な問題は、すぐに解決できるものではありません。
お母さんを説得しようとしても、抱えている問題が解決されないと、お母さんは根本的には変わらないでしょう。
しかし、あなたがお母さんを見る見方を変える事はできます。
今まで、ヒステリックにわめき立てる感情的な面しか見えなかったのが、また違った角度から見ると、ヒステリックな感情の背景にある、お母さんの苦しみや悲しみが見えてくるでしょう。
お母さんの生き方を理解しようとしたり、共感できる部分ができれば、2人の関係性も必ず変わってくるはずです。
お母さんの生き方を否定しない。
まず認める。
そんなところから始めてみませんか?
まとめ
母性とは、聖母の様な慈愛に満ちた愛情と同時に、飲み込み、殺してしまう様な攻撃性とを併せ持つ複雑なものです。
子どもを育てる母は、この二面性と向き合いながら生きていく事になりますが、自分の母親との関係や夫との関係性など、様々な要因がこの二つのバランスを崩してしまいます。
母が怒る事に悩んできた人にとって、母が背負ってきたこれらの人生の荷物を引き受けるのは、重く辛いものです。
しかし、母の辛さや生き方を認めて共感する事はできます。
まずできる事から始めていきましょう。
ただ、その母の荷物があまりにも重すぎる時、母との関係を一旦置いてみる事も時には大事です。
一番大事なのは“自分”です。
それから、もしかすると母が怒るのは発達障害があるからかも…と考えている方、女性の発達障害について書いています。是非、この記事も参考になさって下さい。
また、喫煙とイライラも関連している時もあるようです。こちらもご覧下さい。
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