大人の発達障害は、最近やっと知られるようになりました。「発達障害」は子どものもの・・・と思われがちですが、子どもの頃のしんどさをそのまま抱えて大人になった人は沢山います。
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ただ、そのしんどさを抱えて何十年も生きてきたので、発達障害の症状そのものよりも、もっと他の症状が表に出てきていてわからないことが往々にしてあります。
“自分は発達障害かも?”という視点を持たなければ、なかなか気づきにくいこともあるのです。
今回は大人のADHDについて考えます。
どんな症状なんでしょうか?
どうしたら診断を受けられるのでしょうか?
発達障害って何でしょうか?
まずはこの表を見てください。
発達障害の理解のために 厚生労働省
- 自閉症:現在は自閉症スペクトラムと言われています。表にある3つの領域の苦手さがみられます。言葉や知的な遅れがない場合はアスペルガー症候群と呼ばれます。
- 注意欠陥多動性障害(ADHD):現在は注意欠如・多動症や注意欠如・多動性障害と言われていますが、日常的には「注意欠陥多動性障害」と呼ばれることが多いです。
- 学習障害(LD):他の学習と比べると「読む」「書く」「計算する」が特に苦手な場合に言います。
発達障害は大きく、この3つに分けられます。
しかし、症状が重複していることも多く、ADHDの方が学習障害(LD)を併せ持っているのは約30~50%、ADHDと自閉症スペクトラムを併せ持っているのは約5~6%、他にもてんかんやチック、強迫性の障害を併せ持っていることがあります。
ADHDの症状をチェックしてみましょう
ADHDとは、注意力や多動、衝動性の問題が強くて、日常生活に支障をきたしてしまう障害です。大きく3つのタイプに分けられます。
多動・多弁型
- 落ち着きがない
- 話をしていても目がキョロキョロして落ち着きがない感じ
- 貧乏ゆすりや指をポキポキ鳴らす
- 家事や仕事をしていても他のことに気持ちが行ってしまう
- 仕事をやりかけたままで他のことをする
- 話し出すと止まらない
不注意型
- 集中力がない
- 片付けができない
- 忘れ物が多い
- 仕事でケアレスミスがとても多い
- 時間の管理が苦手で逆算して行動できない。だから約束の時間にも遅れる
- 仕事の約束そのものを忘れる
- 締め切りに間に合わない
- 作業などを順序立てて行うことが苦手
- 興味があることには集中して止められないけれど、コツコツとしなければならないことは長続きしない
- 仕事で同時にいくつも言われると訳が分からなくなる
- 刺激に弱く、何かをやっていてもすぐに目移りしてしまう。そして、何をやっていたか忘れてしまう
- 飽きっぽい。時間をかける仕事が苦手
- よくけがをしたり、事故にあう
- 家事が段取り良くできない
- こどもの幼稚園に時間内に連れていけない。いつも遅刻させてしまう
- 買い物に行っても買い忘れが多い
- 主婦として失格だ・・・と自分を責めることが多い
衝動型
- 言いたいことが我慢できないので失敗する
- 人の会話に割って入ってしまう
- 欲しいものがあるとついつい衝動買いしてしまう
- 怒りっぽくて、スイッチが入るとすぐに怒る
- 仕事で人に相談せずに勝手に決めることがある
- 自制心が利かずに、欲求に勝てないときがある
- ゲームや喫煙、お酒がやめられない。
- 何でも仕事を引き受けてしまって、手いっぱいになる。そしてできない。
当てはまることが多い、またはとても強く当てはまる項目がいくつかあるのなら、ADHDを疑ったほうが良いかもしれません。
大人のADHDに特有な症状~ADHDのマーチ~
大人のADHDは、基本的には子どもの症状と同じで、診断基準も同じです。しかし、背負ってきた期間が全く違いますね。
大人のADHDの人は、それだけ人から怒られたり、うまくいかなくて落ち込む期間が長かったということです。
ADHDの方は小さい頃から叱られたり、失敗することが多く、それが反抗的な行動に発展することがあります。
小学生くらいの子どもは、何かにつけて反抗的で口ごたえが多く、他人をわざといらだたせたり、意地悪で執念深くなったりします。それを反抗挑戦性障害と言います。
思春期になるとそれがさらに発展すると、攻撃性に拍車をかけて、凶器で人に危害を加えたり、窃盗をしたり、学校を怠けていかなくなることが頻繁に続くようになります。それを行為障害と言います。
こうやって、ADHDに加えて、二次的にいろんな症状を背負っていくことをADHDのマーチと呼びます。
ADHDのマーチには、自分に自信がなくなり、無力感に悩まされるうちに精神的に不安定になり、不安障害やうつの症状を持つパターンもあります。
だから大人になった時の診断では、ADHDの症状よりも二次的な障害、つまり、うつや不安障害がひどくなっていたり、反社会的な行動が目立ってしまう人もいます。
ですから、そういった症状に隠れてADHDが見えにくくなっている場合もありますので、診断にはとても注意が必要です。
ADHDの診断までにしておくことは
では、ADHDの診断はどうやって行われるのか見ていきましょう。
子ども時代を振り返ろう
ADHDは大人になってから発症するものではありません。ADHDは脳の機能障害が原因とされていて、生まれついての障害だとされています。
従って、幼少期の様子を知ることが、診断には非常に大事になってきます。
1、2歳の頃はどうだったか?幼少期の様子がどうだったか?小学校ではどう過ごしたか?
しかし、ご自身は幼少期のことは覚えていないかもしれません。ご自身で振り返るならば、小学校、中学校、高校時代の様子を思い返してください。
ここに、表を挙げておきます。参考にして思い返してみてください。
大人のためのADHD.co.jp 日本イーライリリー
親に小さい頃の様子を聞いてみよう
幼少期の様子は親に聞かないとなかなかわからないと思います。お母さんに聞けるようでしたら尋ねてください。
はじめはきっと「そんな小さな時のこと思い出せない。」と言われると思います。
そこで、母子手帳や育児日記、幼稚園の連絡帳や、学校の通知表、撮りだめしているホームビデオなど、小さい頃を思い出せそうなものを参考にして、お話ししてください。「そう言えばね・・・」と、ポツポツと思い出して下さると思います。
小さい頃に何もつらいことはなかった、生きにくさを感じなかった。そんな方はADHDではありません。今のしんどさは、他の病気が影響しているかもしれません。
どこで診断を受けるのか
病院
大人のADHDを診断してくれる病院はとても少ないです。精神科、神経科、心療内科で探してみてください。
ネットで調べて、大人の発達障害を診断してくれるのかを見てください。わかりにくいようしたら、実際に電話で確認するのも手です。
発達障害者支援センター
各都道府県に1か所以上設置されています。電話での問い合わせができますので、まずは電話で相談するのもよいでしょう。
診断できる病院を紹介してくれるだけでなく、個別の相談に乗ってくれたり、就労支援を行ってくれたりします。
同じような症状を持つ方どうしのピアカウンセリングを行っているところもあります。
センターは基本的には診断は行っていません。
ADHDの診断の流れ
- 初診:初診の時は、もし、お母さんが付き添ってくださるのなら一緒に行って頂きましょう。小さい時の様子をたくさん尋ねられます。幼少期のことが分かる母子手帳や通知表も持参しましょう。
- 医療的な検査、発達的な検査:てんかんなどの基礎疾患はないか?器質的な脳の異常はないか?などを調べることもあります。知能検査などを行うことも多いです。
- 診断:1回の診察だけでは診断がつきにくいことが往々にしてあります。数回通ってつくこともあれば、いったん診断がついてからも、経過を追ってみると他の診断名に変更されたりすることも多いです。
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ADHDの治療~薬は一生飲むの?~
ADHDと診断されたらどんな治療が始まるのでしょうか?
ADHDは生まれついての脳の特徴なので、治療によって完治させることはできません。しかし、薬を服用することで症状を軽くすることができます。
治療で一番よく使われている薬はコンサータです。ドーパミンをいう神経物質の働きを活発にする薬で1日に一回、朝に服用し、夕方まで効果が続きますが、夕方以降も続いてほしい人には不向きです。効果は比較的早く表れます。副作用で頭痛や食欲不振、吐き気や体重の減少がみられ、日常生活に支障をきたす時には服用を中止します。また、耐性や依存性が生じてしまいやすいので、注意を払うことが必要です。
治療で、次に選択されるのはストラテラです。脳のアドレナリンを活発にさせる薬で、1日に2回服用します。効果は24時間続きます。依存性がなく、副作用も少ないのが特徴です。効果が出始めるのに1か月以上かかってしまうのが、やや困るところです。
治療薬で一番新しいのがインチュニブです。2019年5月に発売されたところです。インチュニブはストラテラと同じように耐性、依存性がありません。アドレナリンに作用します。1日1回の服用で、効果が出始めるのも早いです。6歳以上18歳未満の子どもが適応ですが、18歳を過ぎても継続が必要だと判断された場合には使うことができます。
どの治療薬も、服用することで「集中力がついた」「人の話がよく聞き分けられる」と、効果を実感する人が多いです。子どもでも「なんか、賢くなった気がする」と、漠然と変化を感じることが多いのが特徴です。
治療の効果が出てくると、「話を最後まで聞くのはこんなことなんだ!」「落ち着いて行動するってこういうことなんだ!」と様々な気づきがみられます。自分の行動を客観的に評価でき、自己コントロールができるようになるのです。
ですから、薬で治療することによって、行動をコントロールするためのトレーニングを、自分自身で気づきながら行えるという大きなメリットがあります。薬の治療を通して、うまくいくパターンを自分で学び、後々には薬を使わなくてもよくなった!という人もいます。
薬は一生使わなくてもいいのです。
薬以外のADHDの治療って?
ADHDの治療では、薬以外の治療もとても大切です。
環境調整
仕事で気が散りやすい時は、壁に向かて作業するなど、集中しやすい方法を考える。
忘れ物をしないように、決まったものを決まった場所に置くような工夫をする。
スケジュールを管理しやすいように、家でスケジュールボードを活用したり、携帯のスケジュール機能を活用する。
そんな、環境の工夫を行って、生活しやすい工夫を行います。
認知行動療法
認知行動療法は、「自分の考え方、認識の仕方、行動の仕方」を変えていくトレーニング方法です。
ADHDの方は小さい頃から、周囲の無理解によって叱られたり、からかわれることが多く、自信を喪失してしまって、自己肯定感がとても低くなっています。
「どうせ自分にはできない」「きっと、自分ができないからみんなが怒っている」そんな否定的な理解をしがちです。
認知行動療法は、そんな考え方を少しづつ変える工夫をして、間違った認識で人間関係が崩れないようにしていく方法です。
まとめ
ADHDは生まれつきの脳の機能の問題が原因で起こる障害です。
従って、幼少期からADHDの症状を持っていたということを前提に診断が行われます。
ADHDは衝動性、多動性、不注意を中心とする症状があり、幼少期からの行動を詳しく聞いていきながら診断が確定していきます。
治療は、薬物療法、環境調整、認知行動療法などがあります。
大人のADHDを診断できる病院はとても少ないのが現状ですし、幅の広い治療ができる病院はとても限られています。納得のいく治療ができるようにしていきましょう。
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