発達障害を調べていると、ADDという言葉を時々耳にするかもしれません。ADHDと似た言葉ですが、同じなのでしょうか?それとも違うものなのでしょうか?
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今回は、発達障害の中の、ADDとADHDとの違いについてまとめてみました。
発達障害 ADHDとADDの歴史
発達障害について
発達障害は、身体に障害を持つ「身体障害」などの様に、パッと見て判断することが難しい障害です。
「コミュニケーションの力」「社会性の力」「学習の力」「注意力の力」など、日常生活で求められる様々な力を見た時に、得意な点と不得意な点のバラツキが大きかったり、その不得意さが日常生活に影響を与えていて、生活に支障が出てきた時に「発達障害」と判断されます。
つまり「発達障害」は「社会と関わる力の発達」の問題だと言うことができます。
発達障害は3つの障害に分類されています。
- 自閉症スペクトラム
- 注意欠如多動性障害(ADHD)
- 学習障害(LD)
詳しくはこちらの記事をご覧ください。↓
発達障害とADHDってどう違うの? 子どもの発達障害について
発達障害 ADHD、ADDの違いとその歴史
発達障害の概念ができるまでには紆余曲折の歴史があり、20世紀に入った頃から「多動が目立つ子ども」などが報告されていました。
その後、多動や衝動性、学習上の問題に対して、脳に、見えない小さな傷があることが原因だとする認識が深まり、それは MBD(Minimal Brain Dysfunction:微細脳機能障害)と呼ばれていました。
日本でもほんの30年くらい前でも、そう呼んでいました。
当時はダスティ・ホフマンが演じる自閉症者の兄と、トム・クルーズが演じる弟との交流を描いた映画『レインマン』が世界中で大ヒットし、機械的な記憶にたけるものの、人と交流することができない、自閉症の兄の姿が世界中の人々に強く印象付けられました。
自閉症の人ってこう言う人のことを言うんだ…と世界中の人が知ることになりました。
でも、自閉症的な偏りが感じられるものの、何となく違う。知的にも高い。知的障害だけの問題ではない、何となく発達的な偏りが見られる。そんな、自閉症の周辺の症状を持つ子どもたちが沢山いました。
当時は、そんな子どもたちに対してMBDと言う言葉を使っていたように思います。
その後、アメリカ精神医学会が作成している診断基準 DSM(Diagnostic and Statistical Manual 精神疾患の診断・統計マニュアル)のパート3バージョンである DSM-Ⅲが日本に導入されるや否や、それまであやふやだった子どもの精神医学の領域でも“診断”を強く意識するようになりました。
この辺りから段々と、今の発達障害の概念の基礎が作られるようになってきました。
ADDとは、そのDSM-Ⅲに出てくる定義の1つで、『注意欠陥障害』(Attention Deficit Disorder)といわれるものです。
ADDは“注意の維持の難しさ”と“衝動性の制御の難しさ”を指す障害で、画期的な概念でした。
ところが定義はどんどん変化していき、次のバージョンである DSM-Ⅲ-Rでは、ADDと言う定義はあっという間に姿を消し、今でも使われているADHDという言葉が出てきます。
ADHDは『注意欠陥・多動性障害 』( Attention Deficit Hyperactivity Disorder)と呼ばれるもので、現在と同じように、多動・衝動・不注意の3つの症状をさしています。
しかし、その後もADDと言う言葉は比較的よく使われおり、ADHDの多動・衝動・不注意の3つの症状から多動を引いた、不注意と衝動性の問題が中心になる症状に対して『ADD』と日常的に使ったりしています。
現在はDSM-5が使われていますが、そこにもADDという言葉はなく、ADHDはさらに、「注意欠如・多動性障害」または「注意欠如・多動症」との呼び名に変えて定義されています。
つまり、ADHDとADDは「発達障害」の概念の中では兄弟のような間柄で、ADHDとADDとの違いは『多動』が入るか入らないかの差にある。ということができます。
ADHDとADDの症状
ADHDとADDとの症状について見ていきます。
ADHDとADDとの違いは多動があるかないかです。ですから、ADDは①多動・多弁を引いて考えてください。
①多動・多弁型
- 落ち着きがない
- 話をしていても目がキョロキョロして落ち着きがない感じ
- 貧乏ゆすりや指をポキポキ鳴らす
- 家事や仕事、勉強をしていても他のことに気持ちが行ってしまう
- 仕事や勉強ををやりかけたままで他のことをする
- 話し出すと止まらない
②不注意型
- 集中力がない
- 片付けができない
- 忘れ物が多い
- 仕事や勉強でケアレスミスがとても多い
- 時間の管理が苦手で逆算して行動できない。だから約束の時間にも遅れる
- 仕事や友達との約束そのものを忘れる
- 締め切りに間に合わない
- 作業などを順序立てて行うことが苦手
- 興味があることには集中して止められないけれど、コツコツとしなければならなことは長続きしない
- 仕事や勉強で、で同時にいくつも言われると訳が分からなくなる
- 刺激に弱く、何かをやっていてもすぐに目移りしてしまう。そして、何をやっていたか忘れてしまう
- 飽きっぽい。時間をかける仕事や勉強がが苦手
- よくケガをしたり、事故にあう
- 家事が段取り良くできない
- こどもの幼稚園に時間内に連れていけない。いつも遅刻させてしまう
- 買い物に行っても買い忘れが多い
- 主婦として失格だ・・・と自分を責めることが多い
③衝動型
- 言いたいことが我慢できないので失敗する
- 授業で、当たっていないのに勝手に答える
- 人の会話に割って入ってしまう
- 欲しいものがあるとついつい衝動買いしてしまう
- 怒りっぽくて、スイッチが入るとすぐに怒る
- 仕事で人に相談せずに勝手に決めることがある
- 自制心が利かずに、欲求に勝てないときがある
- ゲームや喫煙、お酒がやめられない。
- 何でも仕事を引き受けてしまって、手いっぱいになる。そしてできない
- 自制心が利かずに、欲求に勝てないときがある
- ゲームや喫煙、お酒がやめられない。
- 何でも仕事を引き受けてしまって、手いっぱいになる。そしてできない
ADHDとADDは大人にもあるの?
不注意でおっちょこちょいは子どもの専売特許かもしれません。
また、小さな子も多少の違いはあっても多動で衝動的な面は往々にして見られ、子育てお悩みベスト5には必ず入ってくる悩みです。特に元気な男の子は、その傾向が強いです。
だから、子どもをみる時、ADHDかどうかの判断は専門家でも難しいことが多いです。それくらい、子どもと多動・衝動は身近なんですね。
ADHDは子どもに見られる症状みたいですが、実は大人までずっと持ち続ける人も多くいます。
上記に挙げた症状は、子どもにも大人にも向けて書いていますので、大人の方もご参考ください。
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大人や女の子に多い不注意とADD
大人で多動の人はあまり見かけませんね。
子どものように走り回ったりはしません。
大人の多動でいうと、“何となく落ち着きがない”“貧乏ゆすりなど身体を動かすことが多い”という形で現れますが、多動や衝動性は年齢と共に改善されてくることが多いものです。
大人になっても残るもの。
それが「不注意」です。
また子どもでも、多動や衝動性が目立つ、いわゆる“クラスで目立つ子”に隠れて、目立たずに過ごしているけれど、実はとっても生活に困っている子どもがいます。
それも「不注意タイプ」です。
キャラクターでいうと、ドラえもんに登場する主人公、のび太くんのようなのんびりとして忘れ物が多い子どもを指します。
のび太くんは男の子ですが、実は女の子のADHDに多いのが、この「不注意タイプ」です。
不注意タイプはしっかりと気をつけて見てあげないと、見過ごされてしまい、困り感を抱えたまま大人になってしまいます。
このタイプは“要注意”ですよ。
このタイプは注意深く観察して対応してあげましょう。
そんな注意喚起の意味もあって『ADD』という言葉が慣習的に使われ、そして残り続けているのかもしれませんね。
まとめ
発達障害の歴史の中で、“注意の維持の難しさ”と“衝動性の制御の難しさ”を指す『注意欠陥障害』(ADD )といわれる定義が生まれたのも束の間、『注意欠陥・多動性障害 』( ADHD)という定義がそれに取って代わり、以来、ADHDという言葉が長く使われています。
ADHDは多動、衝動、不注意の3つの症状を主な症状としますが、ADDは、そこから多動を差し引いた症状です。
つまり、ADHDとADDの違いは「多動があるかないか」という違いによります。
大人のADHDや女の子のADHDの症状には「不注意」を主症状とする人が多く潜んでおり、見た目からは気づかれにくいそれらの症状に対して、私たちは、注意深く観察して細やかな配慮を行う必要があります。
そんな自戒の意味を込めて、今もADDという言葉が生き続けているのかもしれません。
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