可愛かった子も中学生になると反抗期真っ只中になり、とても気難しくなってきますね。
何を言ってもケンカ腰なので、親までついイライラして怒ってしまいます。
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親としては、子をどうやって受け止めたらいいのか…と関わり方にとても悩む時期でもあります。
育てにくい子とどう向き合えばいいのか、中学生の心理を理解しながら考えていきましょう。
中学生時代は精神的な大きな転換期で育てにくい
皆さん自身にも記憶があるように、中学生時代は気持ちが大きく浮き沈みして揺れ動く、とても不安定な時期ですね。
思春期は“心の中に嵐が吹き荒れる”時代だと言われ、心の中は全く穏やかではありません。
彼らは、もがくように毎日を生き、小さな事に一喜一憂しながら過ごしています。
私たちもそうやって成長してきたので心情的には分かりますが、今度は親の立場に立ってそれを見てみると、中学生の子たちの溢れるエネルギーと攻撃性に直面させられて、子に対応するのがいかに難しくて育てにくいかを思い知らされます。
手を焼く小さな子とは質的に全く違う反抗と攻撃性。
中学生時代は、身体だけでなく、心が大きくシフトチェンジする人生の大きな転換期なのです。
子どもは13歳で一度死ぬ
とっても過激なタイトルですが、臨床心理学的には“13歳”というのはとても意味があります。
13歳は、子どもが子どもとして完成し、集大成を迎える年齢です。
つまり、子どもとして“成人”し、新たに“大人”に生まれ変わる節目の年齢なのです。
この年齢の子は“子どもとして悟り”を開き、どこか人生を生き抜いた感覚を覚えます。
そして、子ども時代の自分が死に、大人へ生まれ変わるような“生と死”を意識するのです。
実際に、自殺する子どもが増えるのもこの年齢です。
人生の大きな節目を迎える年齢であり、1番不安定で危険な年齢でもあります。
精神的に、13歳で子どもは一度死にます。
幼虫がサナギになって脱皮するように、子は今までの自分を脱ぎ捨てて、蝶のように、それぞれの個性を持った大人へと成長を遂げていくのです。
思考様式の変化が起こる中学生〜挫折と劣等感〜
臨床心理学的に13歳で一度死ぬ…と述べましたが、実際に脳内でも激しい変化が起こっています。
子どもの脳は10歳位から大きく成長します。
そして、今までの具体的な思考からより抽象的な思考ができるようになります。
抽象的な思考ができるようになると、自分を客体化して分析できるようになり、自分と他人の違いを客観的に見ることができるようになります。
小学校高学年から中学生にかけて、今まで気づかなかった自分の個性に気づき始め、自分の良さと共に、自分の短所にも気づきます。
だからこの年齢の子は一旦、自己評価がとても低くなり、挫折を経験したり、劣等感を抱き始めるのです。
この時期の子はみんな鬱々としています。
イライラしているように見えたり、感情の起伏が激しくなって、不安定な感じになります。
このもがきが怒りや反抗につながり、親はとても“育てにくい子”だと感じるようになるでしょう。
しかしこの時代の子どもたちは、この挫折を乗り越えようともがき、苦しみながらも“自分は自分”“人は人”と考えられるようになります。
自分の良さも悪さも受け入れて、“これが自分なんだ”と、確信を持つようになります。
そして、大人の道を歩んでいくのです。
「ライフサイクル」という発達論から見た中学生の課題
エリクソンという精神分析学者は、人は生まれてから死ぬまで成長を続け、人生の各段階で達成すべき課題があるーと言う、ライフサイクル論を展開しました。
エリクソンは人生を8つのサイクルに分けて考え、中学生は5番目に当たる『思春期・青年期』に属します。
この中学生時代に達成したい課題は“自分は一体何者なのか”ということです。
例えば昔ならば、職人の息子として生まれたら、当然の様に職人の道を選択し、小さい時から迷う事なく職人としての意識を持って成長したでしょう。
自分は“◯の息子だ”“こんな職業を期待されて生きてきた”の様に、周囲からの期待と、生きたい道がブレる事はありませんでした。
しかし、現在は“どう生きるか”の選択肢はとても多いです。
自分が今までどう生きて、これからどんな生き方をするのか。
思春期の子はとても迷ってしまいます。
「一体自分は何なんだろう」「何の為に生まれてきたんだろう」と自分自身が分からなくなってしまいます。
また、自分と他人との関係の中で、自分と他人との共通性や、違いを意識する様にもなります。
“自分は自分。他人は他人”と、意識していく事を通して、他人も自分もどちらも受け入れられる様になれることも、この時期の課題です。
ライフサイクルには、それらの発達課題が達成できなかった時の“危機”が存在します。
思春期では、発達課題が今述べた様な「自分は自分」という“自己同一性”であるのに対して、“危機”は、この様な“同一性”がうまく確立できず、他人と自分とが上手く区別できなくなり、他人に自分が飲み込まれそうな恐怖を感じたりします。
“同一性の拡散”“同一性の混乱”と言われるものです。
自分らしさが確立できずに中学生がもがく時、親は彼らを育てにくいと感じるでしょう。
育てにくい子こそ健全なのです
いろんな角度から中学生の発達について述べました。
精神的な大きな変換期に差しかかり、出口の見えないトンネルの中から、一筋の光を見つけようともがく彼らの姿が生々しく浮かんできますね。
中学生の心の片隅には絶えず不安が存在し、挫折と劣等感が彼らの心を踏みにじります。
中学生は厳しい現実を見せつけられて、夢と現実との狭間で葛藤しています。
“自分は何者なのか”、答えを見つけようとして苦しんでいます。
中学生が抱えるしんどさは特別です。
脱皮しようともがく彼らは、もう今までの可愛い子どもではありません。
彼らが苦しみをぶつけられるのは家族だけです。
受け止める側の私たちは“育てにくい子”と感じて当然なのです。
“育てにくい子”こそが、中学生の健全な姿なのです。
“育てにくい子”と否定的な評価をするのではなく、“大人になる為に殻を破ろうとしている頼もしい子”だと考えてあげましょう。
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育てにくい子への関わり方
会話のパターンを変える
中学生の子どもにいちいち反応していては喧嘩になるだけで、益々関係は悪化していきます。
ついつい小言を言ってしまいがちですが、反抗期の子どもが素直に聞くことは、まずありません。
親が一方的で、しかも親の論理で言ってくることに子どもは腹を立てます。
親子関係がギクシャクしている時は少し会話に工夫が必要です。
一般的な会話は、親→子、になることがほとんどでしょう。
でもこの次期はこのパターンはよくありません。
私たち親がしなければならないのは“沈黙”です。
沈黙を守り、子どもが話しかけてきた時に反応して会話するのです。
子→親、のパターンとなる様に工夫してみてください。
親にとって沈黙ほど苦しいことはありませんが、少し待ってあげましょう。
子どもからの発信を受け止める方法に変換してみましょう。
子どもが荒れる頻度は少し下がります。
心の港になってあげる
思春期は“第2の誕生”であり、心が大きく揺すぶられる時です。
小さな子が歩ける様になって行動範囲を広げていく様に、思春期も、“第2の誕生”を果たそうと、精神的な自立を目指して、親から離れていこうとします。
小さな子が行動範囲を広げる時に、母親を行動の基地として母から離れたり戻ったりしますが、中学生のこの時期にも同じ様な行動が見られます。
中学生が精神的な自立を果たす為に、もう一度親を心の基地、心の港にして、そこから飛び立とうとするのです。
普段は生意気なクセに、ふとした瞬間に幼い子どもの様に甘えてくることがあります。
中には親の布団に入って一緒に寝たがる子どももいます。
そんな時は、“私を心の港にして飛び立とうとしてるんだ”と解釈して、甘えさせてあげてください。
心の港になってあげてください。
父親にバトンタッチする
母親はどうしても小言を言いがちで、母との会話がきっかけで荒れてしまうことが多いものです。
あまりにこじれそうな時は、関わるのを父親にバトンタッチしてみてください。
言いたいことがある時は父親に頼んで代弁してもらいましょう。
子どもにとって父は威厳があり、社会のルールを代表する存在として位置しています。
母からの小言は右から左に抜けていって何も聞いていない子でも、父親の言うことならスッと入る事が多いです。
この際、注意担当役は父親に任せてしまいましょう。
まとめ
思春期に入ると、子どもは身体的にも精神的にも大きな変化を迎えます。
脳も大きな成長を遂げ、抽象的な思考ができる様になります。
自分を客観的に評価できる様になると同時に、他人と自分との違いが明らかになり、様々な挫折を味わう様になります。
やりきれない思いや、辛い思いをぶつけることができるのは、1番信頼している親に…です。
反抗的で育てにくい子だと感じる場面は多いと思いますが、この時代の子どもの反抗は、甘えの一種でもあります。
どうしても関係がギスギスしていまいがちですが、口も手も出さない見守りの育児が、この時期には大切です。
中学生にもなると素直には甘えられませんが、まだまだ親からの心の栄養が必要な時期です。
さりげなく甘えさせて、“心の港”になってあげることを心がけましょう。
育てにくいのは今だけです。
もう少し大人になると、今度は大人同士の付き合いができる様になって、違った楽しさが出てきます。
発達障害や精神的な問題に関してはこちらをご覧下さい。
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