誰でもイライラしてすぐ怒ることはあります。
運転中に対向車の人に向かって文句を言ったり、誰かの一言にカチンときたり。
イライラと小さなことで怒っちゃいますね。
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怒る感情は誰にでもありますが、でも「最近怒りすぎ」「怒りすぎて後悔ばかり」と感じることはありますか?
病気かも…と悩んでいる方、怒る症状を持つ精神疾患についてまとめました。
一緒に見ていきませんか?
怒るのは悪いことではありません
人は生きている限りいろんな感情を持って過ごしています。
楽しい気持ち、嬉しい気持ち、悲しい気持ち、そんな感情があるからこそ人と共感できて、社会的な生活を営むことができます。
感情が豊かな方は人生も豊かになれますよね。
だから、怒ってもいいんです。
人生、泣いて笑って、怒って楽しみましょう。
ただ、感情のコントロールは難しいもので、ついつい“やり過ぎてしまう”ことがあります。
この“ほどほどの兼ね合い”が生きる上で大切かもしれませんね。
では、感情について少し見ていきましょう。
感情は大きく分けて2つです
感情は大きく二つの感情に分ける事ができます。
一つは快の感情。そしてもう一つは不快な感情です。
“楽しい”“嬉しい”の様な、心地良いものは“快”の感情です。
快の感情を伴うものは、他人も自分も受け入れやすくて全くトラブルになることはありません。
むしろたくさんあった方が良いでしょう。
一方で“悲しい”“辛い”といった感情は“不快”な感情です。
できるだけ避けたい感情ですが、生きている限りはよく出会う感情です。
人によっては“快”よりも“不快なこと”の方が多い!と感じるかもしれません。
ただ不快な感情に出会った時に、人はできるだけ避けたり逃げたりして、不快な感情を回避しようとするでしょう。
こうやって快の感情、不快な感情、どちらも上手くつき合って、私達大人は毎日を生きています。
子ども達は学校や家庭での生活を通して、ケンカをしたりしながら、こんな感情の付き合い方を学んでいきます。
怒ることと日本の文化
これらの感情の中でとても特殊なのは“怒る”という感情です。
“怒る”とは、不快な感情であるのにも関わらず、その怒りを感じた対象から、逃げるよりも、反対に近づいて関わってしまうという、とても厄介な行動を取ってしまうのが特徴です。
ですから、“怒る”という感情と付き合うのはとても高度な技がいるのです。
その上、日本は特に“怒りを表すのはの良しとしない”文化的な背景を持っています。
例え、怒る感情やイライラする感情が湧いても、人を攻撃したり、ダイレクトに不快感を表したりするのタブーなのです。
やんわりとした含みをもたせた表現が求められ、しかも、その意図が相手にキチンと伝わらなければなりません。
日本人として世の中を上手く泳ぐためには、この“怒る”“イライラする”感情を如何に上手く操作して人と付き合っていくかが、大切な鍵となってくるのです。
ところがどうでしょう。現代はストレス社会です。
毎日、通勤ラッシュに見舞われてヘトヘトになり、職場に行けば、上司に叱られ、部下から追い立てられる人もいるかもしれません。
また、締め切りに追われてピリピリしたり、正確さが求められて緊張したり。
ご家庭では核家族化が進んで、1人で子育てを抱え込んでしまったり、ママ友との付き合いに気を遣ったりしているかもしれません。
誰もがみんないろんな場面でイライラしてストレスを抱えて毎日を過ごしています。
イライラしやすくて、すぐに怒る環境に身を置きがちな現代の私たち。
現代の日本人にとって、イライラ感や怒り感と上手く向き合うのは、とても難しくなってきているというのが現状でしょう。
怒りの感情の良い面
ちょっと今日のご自身を思い返して下さい。
イライラして怒る場面はありましたか?
向き合う事がしんとい時、耐え難いストレスにさらされる時、イライラして怒るかもしれませんが、それは決して悪い事ではありません。
“怒る”感情は、自分自身を守るための“バリア”としての働きも持っているからです。
何かの“脅威”にさらされた時に、ダイレクトに自分の心に入ってしまったら、矢に心を撃ち抜かれるように致命傷となって立ち直れなくなる時があります。
人は、そんなピカピカ光る危険信号に対して、どこかで自分の心を守ろうとしてバリアを張り巡らすのです。
そのバリアが“怒る”感情です。
心のバランスを保つ為に“怒り”は必要なのです。
こうなってくると、“怒る”感情と付き合うのは、益々、本当に難しいものだと感じてしまいますね。
えっ!イライラする病気、怒る病気ってないの⁈
“怒り”を上手くコントロールできなくて悩んでいる方はとても多いと思います。
冒頭にも書いたように、怒りがコントロールできないと、自己嫌悪に陥ったり罪悪感を持ってしまって、精神的にも辛くなってきます。
「もしかして私は病気なんじゃないか?」「このまま怒り続けると病気になってしまうんじゃないか?」という心配になりますね。
すぐ怒る事やイライラがあると病気なんでしょうか?
怒り続けると病気になるのでしょうか?
アメリカ精神医学会による「DSM-5 精神疾患の診断と統計マニュアル」は、日本でも精神疾患診断の基準として活用されています。
DSM-5を見てみると、感情に関する病気として「不安障害」や「抑うつ障害」が挙げられています。
しかし、驚くことに「怒り障害」と言う病気は見当たりません。
つまり、怒る病気はありません。
こんなに身近で、こんなに扱いが難しいのに、怒る病気は存在しないのです。
しかし、一方で、様々な精神疾患の中に「怒り」が存在し、診断基準の一つとして挙げられています。
「怒る」のは様々な病気の兆候で、「怒り」の先には何かにの病気が潜んでいる時があると考える事が出来るます。
では、“怒る感情”が存在する精神疾患にはどんなものがあるのか見ていきましょう。
怒る症状が見られる精神疾患は?
精神疾患その1〜うつ病〜
うつ病は「心の風邪」とよく言われる精神疾患です。
実際に、ある統計では「生涯で一度はうつ病にかかる人」の割合は、何と15人に1人だと言われています。
多いですね。
几帳面で責任感のある人がなりやすいと言われ、様々な過度なストレスが原因になっていることが多いです。
気分がひどく落ち込み、集中力がなくなって、生活する意欲も著しく落ちてしまいます。
睡眠のリズムが崩れ、午前中の調子がとても悪いのが特徴です。
疲労と焦りから、イライラしてジッとしていられなくなり、怒りっぽくなります。
精神疾患その2〜躁鬱病〜
躁鬱病は双極性障害と言われる精神疾患で、落ち込んでしまって鬱っぽくなる時期と、何でも出来そうに感じるくらい気持ちがハイになる時期とが繰り返されます。
遺伝的な要素と環境の要素が重なって発症すると言われています。
始めはうつの症状から始まるのでうつ病と間違えやすい病気ですが、うつ病と双極性障害とでは効果の出る薬が違ってきますので、注意する事が必要です。
「いつもより元気であの人らしくない」と感じられるような症状が軽い躁状態です。
次のような気分の高揚が見られる場合は躁状態です。
・自分なら何でもできそうで偉くなった気がする。実際に態度が大きくなることもある。
・眠らなくてもどんどん仕事ができる気がする。疲れない。
・高額の買い物をしたり、高額のローンを組んでしまう。
・喋り過ぎて、相手が迷惑なのにも気づかない。
躁状態の時に、感情が高まり過ぎて攻撃的になり、人が何か言うとイライラして怒り出す事があります。
また、思い通りにならなくて激しい勢いで怒り、上司にたてついたり、言われたら嫌な事をズバッと言ったりするので、人間関係がこじれる事があります。
そして双極性障害の方で、躁とうつの状態が混在して、不安と焦りからイライラして怒りっぽくなる方もいます。
精神疾患その3〜境界線人格障害〜
境界性パーソナリティ障害と言われる精神疾患です。
偏った思考によって日常生活が円滑に送れなくなる障害で、若い女性に多くみられる人格障害です。
発症率は1〜2%だと言われています。
パッと見た感じは華やかで魅力的な方が多いです。
快活でよく気が利いて、すぐに友達を作ることができて、人を惹きつける力を持っています。
ところが、親しくなると途端に態度が変わり、気分の波が激しくて、とても不安定でイライラとした様子を見せるようになるのです。
親、特に母親との基本的な信頼関係や愛着関係に課題を抱えたまま成長したり、虐待によって人への信頼感や自己肯定感が低くなってしまうことなど、人間関係での大きなトラウマがきっかけになっています。
信頼関係に対する不安定さと見捨てられる不安が基本になっているのので、人との距離の取り方が0か100の距離になり、中間がありません。
相手を理想化するか、とことんこき下ろしてしまうか。
そんな激しさを持って、激しく怒ります。
相手は一生懸命応えようとしますが、底なしの要求に応えきれるはずもなく、疲れ果ててしまいます。
精神疾患その4〜反社会性パーソナリティ障害〜
自己愛的問題が大きい精神疾患です。
法律を破るような行動も平気だったり、嘘をついたり、突発的な行動を取ってしまったりします。
攻撃性が高くてケンカや暴力を繰り返したり、良心に欠け、人への共感性が乏しい症状を持つ精神疾患です。
比較的多く存在すると言われ、100人中3〜5人の割合に見られます。
自分が絶対的に正しいと思っているので、人を軽蔑する事も平気。
嘘を言っても平気なので、周囲の人を上手く丸め込んだりします。
社交性がある人も多く魅力的に見える事も多いので、始めは魅力的に感じて仲良くなると、段々その人の冷たさや共感性のなさ、強暴性が見えてきて、気づくとその人の暴力や暴言に支配されている事があります。
精神疾患その5〜自己愛性パーソナリティ障害〜
“自己愛”というとナルシストのイメージがありますが、もっと根が深く、本当は自分の中の核とも呼べる“自我”がなく、とても不安定な人格を持った精神疾患です。
自分の心の中で描いている理想と自分とのギャップで、自分が壊れてしまう事が怖くて必死で生きている方です。
自分は特別な存在で、輝かしい成功体験を持つと思うので、否定される事を嫌い、相手に賞賛と特別扱いを求めます。
一方で相手への思いやりがなく、協調性も共感性も見られません。
自分を否定されたり、自分の弱さが露呈されそうになると、相手への激しい怒りを見せます。
クレーマーに多いタイプで、ハラスメントの加害者になったりします。
その他の怒る病気
発達障害
すぐ怒る、すぐにイライラする人の中には発達障害の可能性がある方がいらっしゃるかもしれません。
小さい頃から感情のコントロールが下手で、「どうせ、私は…」とすぐに被害的に考えたり、逆に「悪いのは自分じゃない。いつも悪いのはあいつだ」と、怒って人を攻撃しがちになります。
また音に敏感だったり、気持ちを切り替えるのが苦手、不意な変更に腹が立つ事が多いのも特徴です。
周囲の人の説明が曖昧すぎて分かりにくい、周囲の人の感情が分かりにくくてトラブルになる事もあります。
発達障害は、社会性の苦手さ、言葉によるコミュニケーションの苦手さ、融通のきかなさと頑固さを持ち併せた障害です。
常識と言われるような、誰に教えられるでもなく獲得していく知識がちゃんと獲得されていません。
他人に対しての興味や関心が低くて、視線が合いにくいことがあります。
会話が噛み合いにくいことが多く、「お風呂見てきて」と頼むと、本当に見てくるだけで戻ってきたりします。
その場の空気を読みににくく、非常にマイペースです。
相手の気持ちを推測するのが苦手なので、相手が不愉快に感じていることにすら気づきません。
自分の意見を優先しますし、優先されると信じて疑わないこともあります。
人間関係が下手でつまずいてきたので、非常に自己評価が低くて、コンプレックスに悩んでイライラとしてすぐ怒ります。
虐待
育ってきた環境が人格にとても影響を及ぼす事もあります。それは“虐待”です。
小さい頃から叱られたり、体罰を受けて育った子どもは、それを虐待とは思わず、コミュニケーションの手段だと間違って認識してしまい、人とのコミュニケーションに暴言や暴力を持ち込んでしまう事がとても多いのです。
その方が親になった時も、自分がされた方法で子育てをするので、脈々と“虐待”の連鎖が受け継がれていく事になります。
ですから、夫婦間でも、親子間でも、暴言や暴力が日常的になってしまい、イライラしがちで、すぐ怒る事が当たり前になってしまいます。
依存症
パチンコやアルコール、ネットがやめられない。
やめようとしたらイライラしてすぐに怒る。
それらを続けることでしか精神の安定が保てないようなら、それは立派な依存症で、病気です。
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怒りが自分に向かう時
皆さんは怒りを感じた時にどうなさいますか?
腹が立ってケンカをしてしまった。
我慢した。
等、その人が怒りに対して取る行動は様々でしょうが、人が怒りを感じた時に取る行動は概ね二つに分けられます。
一つは怒りを外に向ける方法、もう一つは内…自分に向ける方法です。
外に怒りが向く病気には、上記に示したうつ、躁鬱、人格障害などの精神疾患が挙げられます。
では、怒る感情が内に向かう病気にはどんなものがあるのでしょうか。
自分に向かう怒り〜自傷〜
様々な精神疾患で、怒りが自分に向かう時によく見られるのが“自傷”です。
若い女性に多く、境界性人格障害の方によく見られます。
リストカットは典型的な行動です。
中には自殺を企てる方もおられます。失敗して、本当に亡くなってしまうような悲劇が起こることもあります。
自分に向かう怒り〜解離性障害〜
過去のあまりにも辛い体験が処理しきれないままで、その悲しみや怒りが自分に向かっていく病気です。
辛くて悲しい記憶を自分から切り離して蓋をしてしまう、一種の防衛反応と考えられる精神疾患です。
自分が自分であるという感覚が薄れてしまう離人感を感じたり、一定期間に記憶を失ったりします。
蓋をしたい事実があまりにも辛い時には、記憶を失っている間に別の人格が出てくる時もあります。多重人格です。
別の人格になっている時に抑えていた怒りが出て、とても攻撃的な人物になったりします。
まとめ
怒りやイライラの感情を持つととても厄介な行動を取るのが特徴で、その感情と上手く付き合うにはとても高度な技が必要です。
その上日本の文化的背景には、怒りをあらわにするのはタブーとされる意識があるので、日本人として世の中を上手く泳ぐ事はとても難しいものです。
怒りが外に向かったり自分に向かったり、あるいはその怒りに蓋をして記憶を切り離したりと、怒りを伴う精神疾患には様々なものがあります。
また、精神疾患でなくて育ってきた環境や発達的な側面に注意を向けることも大切で、虐待や発達障害が原因となって“怒る”人格を形成している時もあります。
怒りは様々な病気のサインでもあります。
怒りすぎてしんどい時は、思い切って病院の門を叩いてみるのも手です。
その先には新しい自分が待っています。
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