お子さんを育てていると、ふと「この子は発達障害かも」という不安が頭をかすめることがあると思います。
特に子どもの年齢が小さいと、その傾向は強いかもしれません。
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今回は、発達障害の中でもよく知られている自閉症とADHDの症状を見ながら、定型発達する子どもさんとでは何が違うのかをまとめてみました。
どんなお子さんも発達には個性があります。お子さんが発達障害ではなくても、こういう視点から個性を知ると、育児が少し楽になりますよ。
発達障害ってなあに?
まず「障害」と聞くと思い浮かべるのは「身体障害」や「知的障害」ではないでしょうか。
身体障害は手や足、体幹、内臓などに障害がある状態を指します。一番身近かもしれません。
「知的障害」は知能検査などで一定の基準に満たない時につく障害です。イメージしやすいですね。
一方で「発達障害」ってどんな障害でしょうか。
「発達障害」とは「何らかの理由によって社会の中で生きにくくなっている」状態を指します。
社会にどれくらい適応できているか?
生活に生きづらさは感じていないか?
そんなことが基準になるのです。
ですから、年齢によっても、生きている社会のルールによっても変わってくるような、とてもあいまいな概念です。
極端にいうと、「社会の中で自力で何とか生きて」いければ、それは発達障害とはなりません。
とってもあいまいで難しいですね。
年齢が小さいと、大人なら達成していることができませんので、未熟さが目立ってしまって「不適応」を起こしているように見えることもあります。
逆に、小さい時は大めに見られたことが、年齢と共に許されなくなるので、年齢と共に不適応に見えることがあります。
また、国が変われば文化的な背景が違うので、社会で許されることと許されないことが微妙に違います。
ですから「発達障害」を判断するには、いろんな視点から発達を評価し、総合的に判断することが必要です。
3つの発達障害
発達障害には3つの種類があります。
アスペルガーなどを含む自閉症スペクトラムとADHD(注意多欠如多動性障害)、学習障害です。
学習障害
読んだり書いたり、計算する領域の障害です。小学校に入って、普段のお勉強を通して気づかれることが非常に多いです。それまではなかなか見えにくい障害です。
自閉症スペクトラム
- 社会性の問題
- コミュニケーションの問題
- 想像性の問題
この3つの点に苦手さがあると言われています
ADHD(注意欠如多動性障害)
- 多動の多いタイプ
- 不注意が多いタイプ
- 衝動性が強いタイプ
の3つに分類されています。
どんな時に診断がつくのか
では、どうやって診断していくのでしょうか?
また、どんな時に診断がつくのでしょうか?
診断の材料って何?
自閉症スペクトラムやADHDは1、2歳頃からの、とても小さい時の様子を振り返って見直すことが、診断にはとても大事です。
1、2歳頃の行動や成長具合に、診断するためのヒントが沢山隠されています。
また、子どもはどんどん成長して変化するので、それと同時に、現在の子どもの様子もしっかりと見なければいけません。
つまり、自閉症スペクトラムやADHDなどの発達障害の診断の材料というのは、小さい頃の発達の記録と、現在の子どもの行動の様子。ということになります。
どうやって診断がつくのか
まず病院に行かなければ診断はつきません。診断できるのは病院だけです。診断が必要な時は、まず病院に行きましょう。
①診察で聞かれること
小さい時からの様子をとても細かく尋ねられます。先ほども述べたように、1、2歳頃を中心して、小さい時はどんな子どもだったかを尋ねられます。すぐには思い出せませんので、母子手帳や育児日記を持参してもらって、参考にすることが多いです。というか、それをもとに話をしないとなかなか皆さん、思い出せません。
②診察で見られること
現在の子どもの様子を観察します。
- どこが得意なのか。どこが苦手な領域なのか
- その差がとても大きいか
- 昔と今ではどんな面が大きく成長して、どこが依然として苦手なままなのか
そんなところを評価していきます。
③診断で大事なこと
- その子どもの個性によって、子ども自身がどれくらい困っているか
- 社会で生きていく為に、今、どれくらいの配慮と支援が必要か
- 今の困り感を、周囲の人に知ってもらう必要があるか
そんな点も、診断にはとても大事な要素になってきます。
①②③を総合的に評価して診断が確定されていきます。
しかし、診断は一回の診察でつくこともあれば、数ヶ月かかることもあります。
- いくつかの特性があるけれど、日常生活でなんとか過ごせていけている
- いくつかの特性があるけれどとてもマイルドで、社会への適応も良い
そんな方も多くいらっしゃいます。そんな時は「様子を見ましょう」と言われることもあります。いわゆるグレーゾーンと言われるのも、この領域に入るでしょう。
自閉症スペクトラムの症状
1.社会性について
- 他人にあまり興味がない
- 自分の世界を大事にして、そこに入り込まれるのがイヤ
- 人なつっこいが、人との距離の取り方が下手で近すぎる
- よく喋るが一方的
- 相手の立場になって考えるのが苦手
- 人の話をあまり聞いていない
- 共感性に乏しくて、一緒に感動などの感情を分かち合えない
- 感情のコントロールが苦手ですぐ怒る
- 話の流れについていくのが苦手
- 空気が読めない
- 人の表情が分かりにくい
- 視線があまり合わない
2.コミュニケーションについて
- 文面通りに考える
- 文や会話に隠された意味が分からない
- 冗談が分からない
- 人との会話が噛み合いにくい
- 独特なしゃべり方をする
- 方言をしゃべらず標準語で話す
- 指さしができない、バイバイの手が反対を向く
- 難しい言葉を使うのに、その意味をあまり分かっていないように見える
3.頑固さ
- 融通が利かなくて頑固
- 決まった流れが好きで、それを崩されることが嫌い。変化が苦手
- 特定のものに対して強い関心がある
4.その他
- 偏食がきつい
- 大きな音が苦手、においにこだわるなど、いろんな面で感覚が過敏、あるいは鈍感
- 睡眠リズムが整いにくい
- なかなか寝ない
ADHD(注意欠如多動性障害)の症状
多動タイプ
- 落ち着きがない
- 座っていても、身体のどこかが動いている
- 話をしていても目がキョロキョロして落ち着きがない感じ
- よく動くので、買い物にもなかなか連れて行けない
- 話し出すと止まらない
不注意型
- 集中力がない
- 片付けができない
- 忘れ物が多い
- 興味があることにはずっと集中しているが、関心がないと全くしない
- 刺激に反応しやすい。何かをやっていてもすぐに目移りしてしまう
- よくけがをしたり、事故にあう
衝動型
- 言いたいことが我慢できないので失敗する
- 人の会話に割って入ってしまう
- 怒りっぽくて、スイッチが入るとすぐに怒る
- 我慢ができない
- 興味を持つとすぐに触ってしまう
発達障害の子の成長は特殊?
自閉症スペクトラム、ADHDなど発達障害のイメージはなんとなくつきましたか?
では、発達障害の子どもの成長はそんなに特殊なんでしょうか?
診断基準に当てはまると“障害?”
あなたが自閉症スペクトラムとADHDの診断基準を見て、「うちの子、ここが当てはまる。」「えっ?私も当てはまるんだけど…。」って不安になりませんでしたか?
実は、自閉症スペクトラムとADHDの診断基準を見ると、誰でもが多かれ少なかれ当てはまってしまいます。
個人にはそれぞれ特性があるので、必ず、生きる上での得意分野と不得意分野が存在するからです。苦手なところは「あてはまっちゃう」となってしまいます。
ですから、当てはまるからといってすぐに「自閉症スペクトラム」「ADHD]「発達障害」とはなりません。
あくまでも総合的に判断することが必要です。
強く困っている。
困ることがいくつもある。
学校や仕事、家庭での生活に支障が出てくる。
そんな“強い”困り感を持っていることがカギになってきます。少し当てはまるからといって“障害”とはなりません。
それは“個性”です。
発達の道すじって?
発達障害子どもと定型発達の子どもとでは発達の道すじは違うのでしょうか?
いいえ。
実はどの子どもも同じです。
よく、自閉症の子どもさんでクルクル回るのが好きな方がいらっしゃいます。でも、それは自閉症に特有の行為ではありません。子どもなら誰でも“めまい”を覚えるような遊びが大好きで、自分から積極的に回る時期があります。
また、自閉症の子どもさんで“一列に物を並べる遊び”にこだわってしまう…というのがあります。これも、自閉症に特有の症状ではなく、ある発達段階に達すると誰でもすることです。
ADHDの子どもさんはよく動きますが、幼児期の子ども、特に男の子も同じようにとても行動的です。これは多くの子どもに見られます。
ある発達段階においては、誰でも同じ経験をする、ということができます。
では、何が違うのでしょうか?
発達障害の子どもと定型発達の子どもとの違い。
それは、定型発達の子どもは、ある一定の時期が来ると次のステップに向かうけれど、発達障害の子はある領域の発達がその段階に長くとどまるあるいは、その次の発達の壁を乗り越えるのに時間がかかる。
そんな課題を抱えているのです。
発達障害児と定型発達児との違い
発達障害の子どもだけが特殊でもないし、特殊な育ちをする訳でもない。
そうなってくると、その線引きはとても難しくなってきますね。
自閉症スペクトラムやADHDなど発達障害かどうかを判断する時に、注目する点をいくつか挙げておきます。
あなたのお子さんが発達障害かどうか気になる時に、次のような点を少し見てあげてください。
自閉症スペクトラムと定型発達の違い
自閉症スペクトラムの子どもと定型発達の子どもの違いをいくつか述べます。
視線の使い方
コミュニケーションは“相手を見る”ことから始まります。
名前を呼ばれたら、その音源にあたる人の方を向く。
目と目を合わせて、その人のお話を聞く準備をする。
尋ねられたことを、目を見ながら答える。
当たり前のような行動ですが、自閉症スペクトラムの子どもにとってコミュニケーションに目を使うのは意外と難しいです。
自分から要求するときは目を合わすけれど、呼びかけに答えたり、返事をする時など、「人からの働きかけに対して、その人に注意を向けながら目を見る」のが苦手な時は、少し配慮が必要かもしれません。
表情
人は嬉しいと表情がほころんで笑顔になり、緊張すると顔がこわばります。
その時の気持ちに合わせて表情が豊かに変化します。
しかし、自閉症スペクトラムの子どもは表情を作るのが苦手です。
いつも何となく固い。
あまり笑わない。
笑わなくてもいい場面で笑うなど、場違いな表情を時々見せる。
そんな時は、少し様子を見てください。
共感性
人は、言葉だけでなくて、いろんな手段を使ってコミュニケーションを図ります。
表情もそうですね。
他にも「共感性」が挙げられます。
「ねえ、ママ見て。こんなにきれいな葉っぱがあった!」とでも言うように、葉っぱを見せて、子どもは嬉しそうな表情をします。「きれいね。大きいね。」と共感するところから情緒的なつながりが生まれ、コミュニケーションが生まれます。
“共感してほしい”という感情は、人との関係を作る上での大切な要素です。
もし、人と共感する場面があまりなく、人にもあまり関心を示さないようでしたら、保健所などで相談してみてください。
自閉症スペクトラムの子どもは、そういった人との関りが苦手です。
感覚
自閉症スペクトラムの子どもは、感覚的な問題を持っていることが多いです。
目の使い方が独特だったり、音にとても敏感だったり(逆に、呼びかけなどには鈍感なこともあります)、においに敏感だったりします。
他にも、肌に触れる感覚が苦手で、水が顔にかかるのが嫌だったり、服の肌触りに敏感だったり、粘土や砂など、今まで経験したことのないものを触れるのが嫌だったりします。
舌触りが敏感だったり、においに敏感な子どもは“偏食”という形で表れる子どももいます。
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ADHDと定型発達の違い
次に、ADHDの子どもと定型発達の子どもとの違いを述べます。
動き方
子どもは基本的に、みんな多動です(笑)。
落ち着きがなく、不注意でよくケガをします。
だから、小さな子抱えたお母さんたちは「うちの子は多動では?」と心配になることも多いのではないでしょうか。
小さい内はADHDかどうかの区別はとても難しいですが、中には「ハイハイができ、自分で動けるようになってからは、すさまじく動いていた。」「歩き始めた途端、どこに行くか分からなくて目が離せなかった。」と、かなり早い段階から多動が目立つ子どもさんもいます。
ADHDの子どもの動きは、“ねじで巻かれたように”“何かに突き動かされるように”と表現されることがあります。
大人の指示が耳に入らないくらい動く。座れない。
大人の指示が理解できるくらいの年齢なのに、我慢できなくてすぐに立ち上がってしまう。
親から離れることも平気なくらい、突き動かされるように動いてどこかへ行ってしまう。
そんな動き方が目立つときは、誰かに相談してみましょう。
目の使い方
ADHDは身体がよく動くだけでなくて、目もよく動いて落ち着きのない子どもも多いです。
視線を合わせる時間がとても短い。
何かをちょっと見たら、すぐに視線がそれてしまう。
「丁寧に」「ゆっくり」という作業が苦手で、集中しづらそう。
そんな目の動きが多い子どもは、少しずつでも、ゆっくりと目を使う練習が必要です。
テンション
ADHDの子どもは何かの拍子にフッとスイッチが入ると急にテンションが上がって動いたり、怒ったりすることが多いです。
定型発達の子どもは、多動でも比較的情緒が安定していて、そういった急激なテンションの変化はあまり見られません。落ち着かないといけない場面では、少し自分を制御することができます。
嬉しい、楽しい、腹が立つ。
そんな気持ちの揺れにとても反応してしまい、その反応が「動き」に出るのがADHDの子どもには多いように思います。
自分の中にわいてくる感情にすぐに反応する。大きく反応する。
そんな時は、誰かに相談してみてください。
まとめ
発達障害の子どもも定型発達の子どもも、みんな同じ道筋を通って発達しますが、発達にムラがあるのが発達障害の子どもの特徴です。
自閉症スペクトラムと定型発達の子どもとでは、視線の使い方や、表情、共感性、感覚などにやや違いが見られます。
また、ADHDと定型発達の子どもとでは、動き方、目の使い方、テンションなどにやや違いが見られます。
発達障害の子どもは、得意な分野がある一方で不得意な領域もあり、発達的にアンバランスさがあります。
ですから、「この子はこんなによくできるのに、何故こんなこともできないの?」と不思議に思うことも多いです。
また逆に、「こんなこともしないなんて躾ができていないんじゃない?」と評価されたりします。
この個性を分かってあげないと、周囲から誤解されるだけでなく、親からもきつく叱られることが多くなります。
そうなると親も子もどちらにとっても辛い状況に追い込まれてしまいます。
発達障害は、関わり方次第でとても変化する障害です。
ぜひ、お子さんの個性を知って適切な育児を心がけてあげてくださいね。
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