あなたの職場に“ちょっとコミュニケーション取りにくいな”“この人とどう接したらいいんだろ”って、迷ったり困ってしまう人はいませんか?
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発達障害は最近よく知られるようになっていますが、大人の発達障害の認知度はまだまだ低く、ご本人も、そして周囲の方も困っていることがあります。
今回は、大人のアスペルガーの方がどんなことに困っているのか。その困りにどう対応すればいいのかを考えていきたいと思います。
大人のアスペルガーってなに?
アスペルガーとは発達障害の一種です。
- 社会性で苦手な面がある
- コミュニケーションが苦手
- 想像性の問題
この3つの症状を持つ障害が自閉症ですが、自閉症は「強くあてはまる」から「少し当てはまる」までの様々な症状が、連続体として存在しているというのが現在の考え方で、「自閉症スペクトラム」と呼ばれるようになっています。
アスペルガーは「知的障害を持っていない自閉症」「言語機能が高い自閉症」と定義されていましたが、今はアスペルガーも含めてみんな「自閉症スペクトラム」と表現されています。
しかし「アスペルガー」という言葉は日常的によく使われており、どんな症状を持つ大人なのかがイメージしやすいので、今回は「素晴らしい力もあるけれど、コミュニケーションがうまく取れなくて困っている大人」という意味合いで「アスペルガー」という言葉を使っていきたいと思います。
大人のアスペルガーと二次障害
大人のアスペルガーを考えるときに気を付けなければいけないのは「二次障害」です。
自閉症スペクトラムやアスペルガーの原因は先天的な脳機能の問題だと考えられていて、生まれつき、得意と不得意の分野の差がとても大きかったり、コミュニケーションで苦手な面を持っていると言われています。
最近は発達障害の概念が浸透してきて、保健所で行われる乳幼児健診の段階で発見され、早期療育が行われるようになってきています。
早い段階で発見されると、周囲の大人はいち早く子どもの状態を正しく知ることができ、適切な教育を行うことができます。
しかし早期に発見されることなく成長すると、本人はしんどさを抱えているのに理解されない状態が長期間に及んでしまい、多くの挫折を繰り返して自信を無くしてしまったり、自己肯定感がとても低くなって、精神的に不安定になってしまいます。それが二次障害です。
二次障害にはうつやパニック障害、不安障害、不登校や引きこもり、非行や反社会的行動など多岐にわたる症状が見られます。
従って大人のアスペルガーの方の対応を考える時には、本来持っている症状だけでなく、二次障害によってしんどさを抱えていないかを把握して対応していくことが大事です。
大人のアスペルガーの人が困っていること
1.社会性について
- 他人との距離の取り方が分かりにくい
- 自分の世界が大事で、そこに入り込まれるのはイヤ
- 思ったままを喋ってしまうので後で後悔する
- 空気を読むのが苦手で場違いなふるまいをしてしまう
- 相手の立場になって考えるのが苦手
- 人の感情を理解するのが苦手
- 感情のコントロールが苦手ですぐ怒る
- 仕事に優先順位をつけられない
- 一方的に話をして、人の話は関心がないと聞かないのでひんしゅくを買うことがある
2.コミュニケーションについて
- 文面通り、言葉通りに解釈しがち
- 文脈に隠された意味が分からない
- 冗談が分からないので、本気で怒ってしまう
- 人との会話が噛み合いにくい
- 話の流れについていくのが苦手
3.想像性の問題
想像性がない・・・ということは、固さやこだわりにつながります。
- 融通が利かない、頑固だと言われる
- 決まった流れが好きで、それを崩されることが嫌い。変化が苦手
- 特定のものに対して強い関心があり、マニアックだと言われる
4.その他
その他にも、感覚の問題などを持っている方が多いです。
- 食材によっては受け入れられない。においが嫌で偏食がある
- 人の顔がなかなか覚えられない
- とても方向音痴
- 大きな音が苦手、音に敏感。不意に触れられるのがダメ
- 痛みに敏感で爪切りもイヤ。散髪も痛くて嫌い
- 手順がなかなか覚えられない
- 読むこと、書くこと、などが苦手
- 落ち着きがない。不注意なミスが多い
大人のアスペルガー、困るのは本人?周りの人?
上記に挙げたような症状で、大人のアスペルガーの方は日常生活や仕事で困っている人はとても多いです。またアスペルガーから派生した二次障害によって苦しんでいる人もたくさんいます。
しかし、大人のアスペルガーの方のみんながみんな苦しんでいるのでしょうか?
実は大人のアスペルガーの方の症状は、裏返してみれば「マイペースさ」は「意思の強さ」に、「頑固さ」は「リーダーシップ」にもなります。
大人のアスペルガーの方の特性は上手く活かされれば、とても強みになります。
また、組織の上に立つような仕事や、人に指示を出す仕事に就いている人は、仕事上の人との距離の取り方が明確なのであまりストレスを感じることがありません。
会社のトップや医師や弁護士など、自分の能力と意思の強さがうまく発揮でき、しかも組織の上に立って指示する立場の方は、社会で成功を収めていることも多いです。
ただし成功の陰で、その人のアスペルガー的な症状によって周りの人が悩まされていることがあります。
お医者さんなら、指示を出す看護師さんや担当している患者さん、弁護士さんなら同僚やクライエント、企業のトップや上司なら部下や取引先の方。そんな人たちが巻き込まれてしまって、辛い思いをしているかもしれません。
アスペルガーの方は相手の立場に立って考えるのが苦手なので、どうしても相手に自分の意見を押し付けてしまいがちです。しかも、その人独特の持論だったりします。
しているつもりはなくても、結果的にはハラスメントになっている時もあります。
大人のアスペルガーの方がいる時、困るのは本人か?周囲の人か?
それも考えなくてはいけません。
だれもつらい人が出ないように、対応の方法をしっかりと考えておくのは非常に重要なことだと言えそうですね。
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大人のアスペルガーの方への対応
対応の基本
- 抽象的な言葉を使わない。具体的にはっきりと伝える
- 長ったらしいお説教よりは短く要点だけを伝える。具体的な肯定文。例えば「電話をすぐに切るな」と怒るよりは「電話を切る時は心の中で1、2と数えてから切る」のように、より具体的な対応策がよい。数字を使うと分かりやすいことが多いです
- 相手の立場を理解させるよりは、誰に何をしたらいいのかを伝える
- 優先順位をはっきりさせる
- ルール、マニュアルを活用する。例外があることもマニュアルに付け加えておく
- 口頭よりはメモや文章で残るようにする
- 誰かがミスしても責めるのではなく許すことも大切だと伝える。許せない時や怒りを感じた時にどうすればいいか一緒に考える。人に当たり散らさない工夫をする
- その人の中で上下関係がはっきりしているときは、その人が絶対に言うことを聞くような人から注意してもらう。他の人の言うことは全く聞かないばかりか反論をしてしまうので、周囲が疲れてしまいます
基本的なマナーへの対応
誰にも教えられないけれど獲得していくマナー。
でも大人のアスペルガーの方は、そこが十分に獲得されていないことがあります。
コミュニケーションは、まず人と目を合わせるところから始まります。でも、“目を合わせないといけない”ことを知らない人もいます。相手が注意しやすい人ならば伝えてあげてください。
また、挨拶には笑顔が必要ですが、表情の硬い人も多いので、「挨拶するときは口角を上げる」と具体的に伝えましょう。
また「ありがとうございます」のお礼、「すみませんでした」の謝罪、「教えてください」「わかりません」と伝えること。そんな基本ができていない人もいます。「こんな場合は○○と尋ねましょう」と、具体的に伝えてあげてください。
上下関係の理解についての対応
職場では、先輩か後輩か?その職場でのキャリアはどちらが長いか?相手が女性か男性か?で自分の立つ位置が微妙に変わりますが、その微妙さが分かりません。
先輩を立てるのが苦手で、誰に根回ししておいたら仕事が円滑に進むかが分かりません。
「〇さんは気難しい人だから、挨拶をして不機嫌な時は伺いを立てるのはやめておきなさい。」と空気の読み方を具体的に伝えたり、「この企画書なら、〇さんと△さんに許可をもらうように」のように誰に根回しするのかを具体的に伝えて対応しましょう。
被害的に考えてしまう人への対応
その人のことを思って注意したのに、大きな誤解が生じて人間関係がややこしくなってしまうことがあります。
よく聞くと、大人のアスペルガーの方は、注意された言葉の本意ではなく、言葉の端々に発せられた言葉に敏感に反応している時があります。
例えば「お客様に満足してもらうためには誠心誠意の対応が必要だ。それができないと接客業失格だよ。」と注意した時、本意は“お客様に真心を”なのに、大人のアスペルガーの方はそちらではなく“接客業失格”に反応したりします。
それで「〇さんから失格だと言われた。もう、仕事ができない。」と落ち込んでしまったり、「〇さんから失格だと言われた。これはハラスメントです。」と逆切れして、その人の立場を危うくしてしまったりします。
不必要な言葉、誤解を受けそうな否定的な言葉はできるだけ避けましょう。
否定文が相手にどんな印象を与えるか。それはその人の認識の仕方で変わってきます。
否定文を使わず、要点のみを端的に言って伝えましょう。
パニックになりやすい人への対応
不意な変化が苦手なので、自分にとって“想定外”なことが起こるとうろたえてしまう人も多いです。
“想定外”にならないように、いろんなパターンを伝えましょう。
子どもが楽しみにしている遠足が、いきなり中止になるとパニックになりますが、「雨天の場合はこうなります。延期になった時はこの日が遠足です。」と予告しておくと、予定変更にも耐えられるようになります。
大人の場合も、予測できそうなことは具体的に伝えておくと良いでしょう。
思い込みが激しい人への対応
大人のアスペルガーの方は頑固で融通が利かないことも多いです。
思い込みが激しいので、自分が“こう”と思ったら、他の人が何を言っても聞かないことがあります。自分の中でもう、すっかりと筋書きができてしまっている感じです。
仕事でも、他の人の意見を聞かずに突っ走ったりします。
「それはだめだ。」と真っ向から否定すると、真っ向から拒否されて堂々巡りになってしまいがちです。
「この部分はいいから採用するが、この部分はこうしよう。」と、その人の意見で尊重できる部分は尊重しながら交渉すると良いかもしれません。
まとめ
大人のアスペルガーは自閉症の一種で、現在は自閉症スペクトラムに含まれている症状です。
社会性の問題、コミュニケーションの問題、想像性・頑固さの問題。その3点の苦手さを抱えた、言語的に問題のない自閉症の方をアスペルガーと言います。
二次障害は大きな問題で、アスペルガーからくる課題だけでなく、二次障害を抱えてしまっていないかを見極めることは重要です。二次障害が重い時は、その治療を優先させましょう。
対応は、できるだけ具体的に、肯定文で、端的に伝えることが有効です。
アスペルガーの方本人が適職について困っていなくても、周囲の人を振り回してしまって、周りが疲れてしまう時があります。
前向きで具体的な対応策は、誰もが楽に過ごすためのカギになります。一人で抱え込まずに、困った時には話がしやすい環境が大事かもしれないですね。
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